2019年5月2日掲載

五月の俳句

目には青葉 やまほととぎす 初鰹

山口素堂

 この句を「目に青葉」と覚えている人もいるだろう。「目には」だとこの上の句は六音になる。俳句は五・七・五音であるから、この「目には青葉」は字余りということになる。また五音と六音ではリズムが違う。しかし原句は六音。この破調も許されるし、余韻がある。

 さて俳句は季節の単語を季語という。一句に一つである。一句に二つ季語を入れるのを季重なりと言い好ましくない。字数が制約されているから当然である。

 ところがこの句には夏の季語が三つある。青葉、ほととぎす、初鰹である。欲張った句であるが、名句といえるか。季節を感じさせるがどうであろう。俳句を離れ、夏の標語のようである。ところで、字余りの名句をひとつ。

滝の上に 水現れて 落ちにけり

後藤夜半

 滝の上(うえ)と読むが、五字に拘わると上(え)ともいえる。しかしこの句は一瞬に水から滝へと状況が変化するところをとらえた。「たき(滝)のえ(上)に」と口ずさんでみると、まったく滝が目に浮かばない。五・七・五の形式を超えた文学が見事にここにある。

2019年5月1日 記