平成23年度 公営企業会計決算特別委員会(第2分科会)の記録
(速記録よりの抜粋)

第2分科会 第3号(平成24年10月24日)

水道局 水道キャラバンを使った学校水道教室

和田委員

 東京の水道事業というのは、明治三十一年、水を流すこと、すなわち通水を始めてから今日まで、都市基盤の最もかなめとなる施設として稼働して、東京の首都機能の大きな、あるいは都民の生活をしっかり担ってきているということであります。
 幸田露伴が「水の東京」という、東京の水政策について一番早く文化人としては筆をとったあの小論が明治三十五年の文章でありますから、ちょうど東京の水が三十一年に通った後、それを見ながら幸田露伴は、川の流れと水道そのものの今日的、あるいは歴史的な一つの経緯をあそこにつづったものだというふうに思いますので、まさに長い長い歴史の中に、東京の水道水行政はあるということであります。
 今、手元にあります決算資料によりますと、平成二十三年度末におきます給水件数は七百二万、前年度と比較いたしますと五万七千件、パーセンテージにしますと〇・八%ふえていると、こういうふうになっております。
 一方で、年間総配水量は十五億三千七百四十四万立方メートルでありまして、残念なあの東日本大震災の影響から、前年度と比較して三千百八十九万立方メートル、二%の減というふうな数字が上がってきております。
 有収率、すなわち料金収入となる有収水量などにつきましても、九五・八%という数字が掲げられております。相当にあの震災の影響があったといわざるを得ません。
 収支状況でありますけれども、総収益は三千二百七十億円、総費用は二千九百六十七億円でありますから、差し引いて三百三億円というのが純利益というふうに数字上にはなっております。
 財政状況は、資産として二兆六千九百九十七億円、負債が二千八百五十三億円でありますから、資本といたしましては二兆四千百四十四億円という数字で、二十三年度の決算の大まかな報告を私どもにいたしております。
 私どもは、これをどう評価するかということでありますけれども、総じて今申し上げたような震災などの背景などを考えますと、これから申し上げます私なりの一つの個人的な評価で、水道局の二十三年度の決算についての私なりの考えを申し上げておきたいと思います。
 東京都の水道局は、平成二十三年度、目標管理と成果重視という視点を掲げまして、私が今申し上げました東京水道経営プラン二〇一〇ということに掲げました五つの課題をこの二十三年度に努力をいたしております。
 まず、安全でおいしい水の安定的な供給、二番目に広域的な事業運営、三番目にお客様サービスと広報広聴の展開、四番目に次世代を見据えた施策の推進、そして、最後の五番目には経営基盤の強化という五本の柱を東京水道経営プラン二〇一〇で掲げているもののちょうど中間地点が、我々が今決算を審議しているこの平成二十三年度ということであります。
 その主要施策というのが今申し上げた五つのものでありますけれども、それを私なりに概観しながら、最終的に一定の評価をし、その後に本日の質問を具体的にさせていただきたいと思うんです。
 まず、第一番目の安全でおいしい水の安定的な供給ということでありますが、この件に関しては、利根川水系の高度浄水処理、それを一〇〇%達成しようじゃないかというようなことで、金町、三郷、それから朝霞浄水場といったところをしっかり整備をしてきているのが二十三年度であります。
 さらに、内容的には、追加塩素の注入設備を導入したりして、また、残留塩素の低減などをするということで、水の質的な改善もここでダイナミックに取り組んでいるということであります。
 さらに、同じく耐震継ぎ手管の二重化といいましょうか、複合化といいましょうか、重ねて安全を保つというようなこと。さらに、浄水場設備の更新や改良といったような経年管、あるいは初期ダクタイル管の取りかえといったようなことなども積極的に行ってきております。
 その結果、平成二十三年度の漏水率、しばしば議論になりますけれども、これは二・八%ということで、前年から少し落ちてはいますけれども、おおむね二・八%という線を保ってきているということも私は評価だろうと思っております。
 次に、第二の主要施策であります広域的な事業運営ということでありますけれども、これは多摩地域の水道で、多摩水道改革計画二〇一〇-二〇一四というものの事業を極力推進いたしまして、多摩水道連絡会といったような連絡会を設置し、住民サービスの向上を図ってきているというところであり、ともすると目が粗くなりがちな水道行政にしっかり細かな配慮をしているというのが多摩水道連絡会の設置だろうというふうに思っております。
 第三番目は、お客様サービスと広報広聴の展開であります。この二十三年度においては、具体的に浄水場の見学コースなどを整備したり、あるいはその間の広域的なニュースの発行など、大きな姿勢でキャンペーンを張っているということも私なりに認めているところであります。
 四番目には、次の世代を見据えた施策であります。これは、平成二十三年度に葛西給水所の小水力発電という目新しい整備をいたしましたし、あるいは練馬など三カ所の給水所、羽村導水などの二カ所のポンプ所、こんなことが都民の健康と安全を確保する環境に関する条例というものに基づいて、優良特定地球温暖化対策事業所という形で認定を受けているところです。これなども民間に先駆けて、当然、都民の健康、安全を推進しているという大きな成果がここにあらわれていると思います。
 それから、最後の五番目でありますけれども、経営基盤の強化ということです。平成二十三年度は、八月から板橋営業所の業務を株式会社PUCに委託をいたしました。さらに、職員も八十人ほど減という形であります。
 ナレッジバンクの活用もしかり、また水道技術エキスパートの認定などをして、今いわれている団塊世代の後の後進の指導という意味で、技術継承ということの意も用いているということで、概観いたしますと、私が一つのメルクマール、尺度として掲げました東京水道経営プラン二〇一〇というものの中の五つの主要主題に照らし合わせますと、平成二十三年度のそれぞれの決算状況は、おおむね私はよしという形に個人的にはしているところであります。
 このような全体総括を踏まえて、まだまだ私は懸念をしている次世代を見据えた施策の推進ということについて、具体的に質問に入りたいと思うんです。
 それは、水をどう使うかということは、かつて「日本人とユダヤ人」という本が出ました。イザヤ・ベンダサンというえたいの知れない名前の本だということで、一つのブームになりましたが、その「日本人とユダヤ人」という中に、日本人は、水と空気はただだと思っているというような書き出しがあって、なるほど、いわれてみると空気と水というのを日本人はただだと思ってぜいたくに使ってきたな。水を朝一番の仕事として、空の水おけをかついで一時間、二時間歩いて水をとりに行ってくるというのは子どもの仕事、そして、それがまた当たり前のように明朗に毎日行われているという南の国の事象なども時折我々は目にすることであります。
 そういうことを考えますと、たかだか二、三メートル歩いて蛇口をひねりますと、きれいで、そして、おいしい水が手に入るという日本が、どれほど豊かで恵まれた国かということを実感しなければなりません。
 しかし、我々はこの豊かさの中で、それを当たり前として受けとめて、あろうことか自販機の水でなければ満足できないような世代まで出てきて、本来、皆様方、水道局が努力をしている水づくりの本当の意味でのとうとい努力や、その成果としての上質な水、おいしい水というものを、もっと評価すべきをしていないという現状があります。
 こんなことを正していくためには、それこそ明治三十五年に幸田露伴さんが書いた「水の東京」という文章に立ち返るならば、私どもは、教育のところからここを押さえていかない限り、私たちの大事な水の東京、東京の水というものを認め、そしてまた広げていくことはできないだろうというふうに思うところなのです。
 そこで私は、さきに申し上げた次世代を見据えた施策の推進という中で、水辺文化の継承ということから、水道キャラバンについて絞って何点か質問をし、教育的な意味で水を、小学生を初め、もっと若く、幼稚園や保育園の子どもたちからしっかり評価をさせて、それを東京じゅうに広めていく、あるいは日本じゅうに広めていくというようなことが、水道行政を通じて都民を教育していく大事な仕事だろうと私は思っているわけであります。
 質問に入りますが、この水道キャラバンは、このようなリーフレットで、読みやすいような形で知らしめられておりますけれども、この導入した目的、それとまた、ここに至る経緯はどういうふうな形で取り入れられたんでしょうか。

吉野サービス企画担当部長

 水道キャラバンの導入の経緯でございますが、従前、水道局では、小学四年生を対象に、水道教室という名前の教室を実施しておりました。この教室の内容をさらに充実し、規模を拡大させたものが現在の水道キャラバンであり、平成十八年度から実施しております。
 また、キャラバンの目的でございますが、次世代を担う子どもたちに、蛇口から直接水を飲むという日本が誇る水道文化を守り、継承していくことでございます。
 なお、キャラバン導入初年度には、八十四校に対しまして実施し、運営経費としては約二千九百万円でございました。

和田委員

 平成十八年というと、ちょうど六年前になります。六年目をことしも迎えているわけですが、当初は都内の大体一千二百校ぐらいある小学校に八十四校、小さく小さくスタートしたのが平成十八年でありました。
 今お答えでも二千九百万円という予算でスタートしたわけでありますが、これが私ども北区にも来ました。そして、子どもたちがこのキャラバンに出会いまして、私の知り合いの小学生も、初めて水のとうとさを知ったというような、教育的に目を開かされたという意見も身近に聞いております。
 したがって、皆様方がやっている効果は着実に地域に広がってきているということをまず申し上げると同時に、このことをきっかけに、やはり水道文化というものを教育的に広げていく、水道の高度化というようなことも大事でありますが、もっと水道というものが命と切り離せない、水というものが私たちの生活に片時も離せないものだということの切迫感、緊張感というものを水道行政の中に生かしていく必要があるだろうというふうに思うところであります。
 それでは、今、決算を迎えている二十三年度の実績、あるいは経費などについて具体的にお伺いいたします。

吉野サービス企画担当部長

 平成二十三年度における水道キャラバンの実績でございますが、対象とする小学校は、国立、公立、私立、特別支援学校を含む都営水道給水区域内の約千三百六十校でございます。二十三年度は、目標とした千百校を上回る千百六十八校において実施いたしました。
 なお、キャラバン運営にかかわる二十三年度の経費は、約二億四千八百万円でございます。

和田委員

 この配っている東京の水道水を学ぼうというチラシの中を見ますと、リーフレットの中では、水道キャラバン、年度別実施校数というのを六年間での延べ合計は四千六百八十一校というふうに書いてあるんですね。確かに単年度では、今お答えのとおりだと思いますが、累積しますと五千に近づいて各小学校に回っております。
 したがって、二度目も、あるいは場合によっては三度目もあるかもしれない。そういう繰り返しの中で、今、私が紹介したように、身近なところで経験した子どもたちは、水の本当のとうとさを知ったということをいっております。
 それだけ教育効果が上がってきているというふうに思いますし、四千七百近い小学校に繰り返し繰り返し行って、水の大切さや、あるいは水のよって来る水源から今日までの、そこの場所までの、蛇口までのルートなどについての説明をされているんだろうと思いますが、そのようなことの具体的な、どういう教育を行っているのかお聞かせください。

吉野サービス企画担当部長

 水道キャラバンは、お申し込みのあった小学校にキャラバン隊を編成して訪問いたします。小学校の学習指導要領に沿って、授業を実施しております。
 具体的な内容でございますが、若手劇団員の寸劇による進行により、映像を初め、子どもたちが参加、体験できる実験などを交えまして、水道水のできる仕組みなどについて、わかりやすい授業を行っております。

和田委員

 子どもたちを対象にしますと、交通ルールの問題なんかも警視庁がやっている子どもに対する理解を深めるキャンペーンなどは、おっしゃるとおり、寸劇だとか臨場感があふれるような形で子どもたちにスムーズに理解していただくような努力をしています。
 同様の手法だろうと思うんでありますが、何しろ子どもたちが喜んで、水に理解を求められるような、そういう環境をつくっていただきたいと思いますし、ここにも書いてあるとおり、映像ですとかジオラマですとか沈殿実験とかろ過実験とか、自分たちが直接かかわって実験し、水と触れ合うことができる。改めて蛇口以前の水の形態を知ることができるということを体験させるというようなことで、子どもたちに、私はいい影響が与えられているというふうに思います。
 この子どもたちの反応ですとか、あるいは学校などはどういうふうに当局のこの種のPRについての評価、感想を持っているんでしょうか。

吉野サービス企画担当部長

 キャラバン隊による寸劇や映像、実験などによる授業が進むにつれまして、子どもたちは笑顔で生き生きと目を輝かせながら主体的に授業に参加しております。
 キャラバン実施後の教職員のアンケートでも、授業だけではわかりにくい、そういうところを実際に目で見て実感できたなど、キャラバンを体験されたほぼ全員の先生から高い評価を得ております。

和田委員

 今、答弁いただいたことに尽きるんでしょうけれども、また私の手元のこのリーフレットを見ますと、先生方へのアンケートという結果では、水道キャラバンの全体的な印象はいかがでしたかというふうに聞きますと、とてもよかったという先生方が八二%、よかったという人が一八%、よくなかったとか、余りよくなかったというのは〇%でした。
 次年度の水道キャラバンを希望しますかということを先生方に聞きましたら、希望するというのは九五%でした。それから、無回答が四、希望しないというのが一%という圧倒的に印象はよくて、学校は希望しているという数字が上がってきているわけでありますから、六年間で四千七百校、皆さん方の勧誘もあるんでしょうけれども、学校から学校へ伝わって、これほどまでに実績が上がってきているということでありますし、何よりも小学校四年生の子どもたちが社会科の授業の中にこれを組み入れられて、ともすると授業というのは臨場感がなくて、先生がホワイトボードに書いたり、あるいは読み上げたりすることで終わってしまうのに、水の精製過程、あるいはろ過過程など、自分が水に触れながら勉強できるわけですから、少し毛色の違った授業として、子どもたちも歓迎しているだろうと思うんです。
 私は今、子どもや学校の感想ということでお話ししましたが、先ほどの答弁にも、先生の一般的な受けとめ方でありまして、私のこの資料にも先生方へのアンケートの結果が八二%と九五%歓迎しているということでありまして、生徒、児童の数字については、私、はかり知れなかったんでありますけれども、これからの一つの課題として、受け手である子どもたちに、四年生一回きり、この機会はないと思いますけれども、しかし、これをこの学校で次の後輩にあなたは伝えたいと思いますかというようなアイテムをつくれば、これは当然、次に伝わっていくわけでありましょうから、そういう子どもたちの意見も聞くことなどのアンケートもぜひ加えてほしいというふうに思います。
 いいことずくめのように見えるこの水道キャラバンでありますけれども、二十三年度については、何か新規の取り組みをなさったんでしょうか。

吉野サービス企画担当部長

 水道キャラバンの内容につきましては、生徒、教職員からのアンケートなどを参考に、授業の内容や実験などのカリキュラムを毎年一部見直して実施しております。
 平成二十三年度におきましては、子どもたちの学習意欲を一層高めるため、水源林ジオラマを使用した実験や、実際に現場で働いている職員によるインタビューを放映するなど、よりわかりやすい内容に見直しをして実施しております。

和田委員

 教室の静的なそういう授業とは違って、ジオラマを導入したり、あるいは実験したり、経験者の声を聞くというふうに、ダイナミックというか、動的な授業をやることで、子どもたちも静かに聞きなさいとか座っていなさいというのと違って、大変喜んで授業を受けているという風景が私もほうふつとすることができます。
 したがって、歓迎されている様子は先生方のアンケート調査にもありますが、多分子どもたちも歓迎だろうと思いますけれども、教育効果を、先ほど申し上げたとおり、子どもたち、児童の側の方の数字もぜひつかむような工夫をお願いいたしたいと思うんです。
 そして、いよいよ最後なんでありますけれども、これから二十三年度の実績を踏まえて、どういうふうな形で、より発展過程の水道キャラバンを考えていらっしゃるのかということについてお伺いいたします。

吉野サービス企画担当部長

 平成二十四年度は、まだ年度の途中でございますが、現在までに千二百二十二校から申し込みがございます。ということで、今年度は千二百二十二校、実施を予定しております。
 今後は、小学校におけるキャラバンのさらなる充実を図るとともに、地域のイベントなど、学校以外の場においても実施を検討してまいります。

和田委員

 水道局といたしますと、昭和三十年代に造設された浄水場などが、いわゆる更新時期に間もなく入ってきて、大きくそちらの方の物理的な対応に追われることになると思います。当然そうなると思います。
 そしてまた、首都直下型の地震などもいわれておりますから、それに対する水道行政の対応も必要だろうと思います。
 しかし、かといって今、私が質問をしてまいりました水道行政の教育的な意味、あるいは水道文化の継承といったようなことをなおざりにしていい理由にはなりません。
 したがって、私はここに十分、水道行政というと、水を高度浄水したものをできるだけ広くというふうに思われがちでありますが、一転して、余り目立たないながらも、水を大事にする、あるいは水は命、そしてまた水の持っている文化といったようなものを広げて、自動販売機よりも、自分で蛇口をひねった方が経済的であるし、また、玉川上水をつくった玉川兄弟のああいう苦労も含め、東京都に脈々と流れている水道のありようを我々も継承できるのだというような形で、しっかり意欲を持って水道に取り組んでいただきたいというふうに思うんです。
 水道職員は四千人といわれておりますけれども、そういう方々、執行部の皆さんもそうです、それから、二つの監理団体も含め、この方向に一丸となって、二十四年度以降、進んでいただきたいと申し上げ、二十三年度水道行政の決算の私なりの意見を申し上げました。
 以上です。