総務委員会の記録(速記録よりの抜粋)

平成24年 第3号(平成24年3月19日)

投票率向上のための施策・学校での選挙教育について

和田委員

 投票率の向上の問題について、何点かお伺いをいたします。
 過去五回の都議会議員選挙の投票率を見ていますと、五回の間で一番高い数値を出したのは、平成二十一年度の五四・四九%でありました。五回の間の選挙で一番低い投票率は、平成九年の四〇・八〇%であります。この五回を平均しますと四八・一五。
 これが高いか低いかという問題はありますけれども、やはり基本的に民主主義が一般投票、すなわち投票で決まるということになりますれば、高ければ高いほどいいというわけでもありません。大変高圧的な独裁的な国でも、投票を行使したときには九五%を超えるという数字がある国もありますし、また、低いところは三〇%を切るようなところも選挙によってはある場合もあります。
 したがって、どの投票率が一番その国にとって、その自治体にとって適正であるかというのは、時代やあるいは民意の動きによって可変されるもの、すなわち動いてしかるべきものだというふうに思いますが、やはり、独裁的な体制のもとで行われる選挙は九五%を超える。これはやはり異常であります。また、三〇%を切るような無関心な住民や国民がいるような選挙については、これまた異常であります。
 したがって、どこが適正な投票率であるかということは、常に選挙管理委員会も含め、議会も有権者も含め、みずからの任務をしっかり把握する中で、どのような、それぞれの使命を完遂したらよろしいかということに、日々腐心をしなければならないというふうに思うんであります。そういう立場から、以下数点にわたって質問をさせていただきます。
 私どもが関心を持つ投票率の大きなポイントのかぎとなるのは、若年層の投票率の向上であります。
 若い方の選挙に対する関心が大変薄くなってきているという一般的な傾向があります。そういう中で、つい先ごろ、これは二月二十四日になりますけれども、都選管が、都立の小石川中等学校におきまして、選挙の出前授業というんでしょうか、こちらが出ていって模擬投票をしていただいたということが、我々にも資料配布をされました。
 私も関心を持っていたところでありますが、これについて、一番新しい若者の選挙に対する一つの試みでありますだけに、対象とした試みであるだけに、どういうふうに選管は承知をしているのか、お伺いいたします。

影山選挙管理委員会事務局長

若年層の投票率でございますが、前回の平成二十一年の都議会議員選挙で見ますと、推定投票率でございますが、六十歳代は七二・六六%に対し、二十歳代は三一・〇九%と、他の年代と比較しても若年層の投票率は非常に低い傾向にありまして、ほかの選挙においても同様な傾向を示しております。
 これまで若年層の投票率向上に向けた取り組みとしましては、常時啓発事業として、児童生徒に選挙への関心や興味を持ってもらうための、明るい選挙ポスターコンクールの開催ですとか、公民の授業などの参考になるように、都内の中学三年生全員を対象に、選挙学習冊子「Let’sすたでぃ選挙」などを作成、配布などさまざまな事業を展開してきたところでございます。
 また、選挙時啓発としても、昨年実施されました都知事選挙では、幅広い世代から支持されてアピール力もあるイメージキャラクターを採用し、それを使用した啓発媒体として、街頭に設置されました大型ビジョンですとか、電車内モニタービジョンなどを活用した動画広告の放映などを行ったところでございます。
 今回、新たな試みとして、将来を担う中高生に、早い段階から主権者としての自覚を促し、選挙の意義とか重要性を理解してもらうことなどを目的といたしまして、中学三年生を対象に、選挙出前授業及び模擬投票を都教育委員会の協力を得て、文京区選挙管理委員会と共催により実施したところでございます。

和田委員

 申すまでもなく、教育基本法の第十四条は二項目用意しておりますが、一項目めは、良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならないという一項目があります。良識ある公民として成長していく過程で、教育基本法は政治的な教養の尊重ということを、強くここでうたっているわけであります。
 したがいまして、きょうは文教委員会ではありませんからここのところは深入りしませんけれども、やはり選挙とか投票というものが単なる社会人になってから、はたちになってから、あるいは二十五になってからというように、選挙権、被選挙権というふうに意識するんではなくて、基本法に書いてあるとおり、良識ある公民、それは政治的教養というものを教育課程の中でしっかり学んでいくべきだというふうに、基本法で一項目で書いてあります。
 このところは、教育者であろうと、あるいはそれにかかわらない人間であっても、やはり我々の共通の後継者である義務教育を受ける子弟が、その教育課程の中で正しく政治教育を受ける、あるいは政治的教養をしっかり身につけるということは、かけがえのない一つの財産にも将来なるわけでありますし、それがひいては、先ほど出されました、六十歳代では投票率が七二%、二十歳代では三一%というふうに、このように若年層の投票率が六十歳代の方と比べて半分以下になってしまっているという残念な結果をしっかり回復していく意味では、もう少し教育基本法の第一項をしっかり、関係者及び我々社会人も自粛をした上で、彼らの意欲的な参加を求めていく、そういう道筋をつくっておく必要があるだろうというふうに思うんであります。
 そこで、小石川の例の模擬投票、これは関心を持って私も見ておりましたけれども、生徒たちの反応、反響、初めてのことでありますし、新鮮であったために、いろいろな予期せぬ感想なり意見が出てきたと思うんでありますけれども、特徴的なものについてお伺いいたします。

影山選挙管理委員会事務局長

 今回の事業は、まず初めに選管職員が、選挙制度の概要ですとか、若年層の低投票率の現状について説明を行い、次に、大学生六人が都知事選挙の立候補者に扮し、みずから選挙公報を作成した上で個人演説会を行いました。その後、候補者と生徒たちとで質疑応答を行いまして、生徒みずからが判断した候補者に投票するという形で実施いたしました。
 また、投票や開票に際しましては、文京区選管の協力を得て、実際の選挙で使用している投票箱ですとか投票記載台、計数機などを使用して行ったところでございます。
 なお、今回の授業に参加した生徒たちは、立候補者の演説に真剣に聞き入り、次々と積極的に質問し、投開票においても、自然に開く投票用紙ですとか、投票用紙をカウントする計数機に驚くなど、大変興味深く投開票に参加している様子がうかがえました。
 実施後行ったアンケートで、以前と比べて選挙に対する関心が強くなったが三十七人中三十四人、これは今回一クラスのみの実施でございましたので、三十七人が母数ですけれども、それから、このような授業をまた受けてみたいが三十七人中三十六人と好評で、生徒たちにとっても大変有意義な授業になったものと考えております。

和田委員

 都議会でも、自民党の田中議長のときに、都議会の議場を使って議会を開いたことがあります。各学校から選抜をされた方々が議席に座って都議会議員になりかわるというような雰囲気や、あるいはその場の勉強されたということで、私もその場におりまして、大変まじめに皆さん頑張っていらっしゃるなということを受けたわけでありますが、こういう機会を提供することによって、今回は投票する側でありましたけれども、投票される側、候補者になった側の方も、模擬的に生徒に体験させながら、緊張感なり、あるいは厳粛な自分の投票権という権利を行使する際の気持ちの高ぶりといったようなものについて、もっと学んでいただいて、有権者になったときに、あるいは被有権者になったときには、これを正しく行使できるような、そういう政治教育の場をもっともっと深めていく必要があろうと思うんです。
 今回の小石川の中等教育学校について、選管の方は高い評価をされているように今時点は聞きました。もうしばらく時間がたつといろんな結果が出てきて、よくも悪くも出てくるかもしれませんので、それを正しく静かに分析、評価しながら、やはりもしもよろしければ、この結果を全都的に広げて、政治教育というこの一つの大事な教育を、正しく東京都の中学校の公民課程に広げていくというようなことで、先行きは若年層の政治に対する無関心、ひいては投票率の低下というものに対する回復策として、私は、選管は、この前は文京区の選管と協力されたようでありますけれども、もとより出先の選管とは当然協力しなきゃなりませんが、教育委員会とも連携をとりながら、若いうちから政治や投票、あるいは政治教育に関心を持つような、そういう働きかけを、実際に動ける立場の選管の方から選挙管理委員会の方にアクションを起こしていったらどうかというふうに提案するものでありますが、どのように考えますか。

影山選挙管理委員会事務局長

 今回実施した出前授業及び模擬投票は、参加した生徒はもとより、先生方や学校関係者にも好評でありまして、生徒たちの選挙や政治に対する関心を高める効果があったと思われます。
 今後、都選管としてもさまざまな工夫を凝らして、この事業の一層の充実に努めてまいりたいと思います。今回のケースを参考にして、区市町村選挙管理委員会が主体となって、地域の学校と連携して同様の事業が行えるよう、都及び区市町村教育委員会にも協力を求めていきたいというふうに考えております。

和田委員

 再々申し上げたとおり、民主主義の根幹が選挙です。選挙で投票率が六十歳代と二十歳代を比べて半分以下だというような状況が決していいわけではありません。あらゆる手段を講じてこの投票率の回復に選管は意を強く用いていくべきだというふうに思うんでありますので、今の答弁の結果を注目してまいりたいと思うんであります。

投票率向上のための施策・有権者への施策について

和田委員

 次の質問に移ります。
 ところで、教育の現場から離れて、有権者になった場合の投票率の問題です。
 国によっては義務制の投票制度を取り入れている国がありますね。それらについての状況をどのように把握されていますか。

影山選挙管理委員会事務局長

 いわゆる投票を義務づける義務投票制度は、イタリアやオーストラリア、ベルギーなどで採用されているところです。これらの国の投票義務違反に対する罰則については、制裁の規定がないものから、選挙人名簿から抹消される場合があるものや、あるいは罰金が課されるものまでさまざまでございます。
 また、各国の投票率は、二〇〇八年に行われたイタリアの総選挙は八〇・五一%、二〇一〇年に行われたオーストラリアの連邦議会選挙では九三・二二%、同じく二〇一〇年実施のベルギー総選挙では八九・二二%となっており、日本の国政選挙と比較して高い傾向を示しているところでございます。

和田委員

 別に投票が義務制だから投票率が高いというふうに直結しているわけではないと思いたいと思います。ただ、結果としてですけれども、義務制を講じているイタリアの八〇・五%、それからオーストラリアは九三%、それからベルギーが八九と、大変高い投票率を得ている国が、どうしても義務制を取り入れているということとの連携をうかがい知らざるを得ないところがあります。
 私どもは、ここへ行くまでにできる努力はしっかりしていく。それには、何も若年者だけじゃなくて、一般の我々も関心を持たせるような工夫、努力をしなきゃならないと同時に、やはりあらゆる手段を講じた上で、やむを得なくなってきて、例えば投票率が国政段階で二〇%台になっちゃったとか、そうなれば、単純にいえば一一%とれば国全体を動かせるような形になるわけでありますから、そんな恐ろしい選挙を我々は予想しているわけではありません。
 しかし、そうなる可能性を防ぐために、選挙管理委員会はできるだけの投票率を確保していってほしいという意味で、今申し上げている小石川の中等教育学校のこの交流などをもっと広げていく、もっと広げていって、義務制を導入しなくても済むような、そういう日本の選挙制度、とりわけ投票率に関しては、ぜひそのような働きかけをしていただきたいと思うんです。
 さてそこで、今時点で、国会では十八歳についての考え方が出てきております。すなわち、投票権をはたちから十八歳に二歳若返らせるというのと、成人をはたちから十八歳に切り下げるというふうなことを、政府は考えようとしております。このように、もしもですよ、十八歳の投票権がもしも付与された場合にどういうことが考えられますか。

影山選挙管理委員会事務局長

 都内で実施されました各種選挙において共通することでございますが、初めて選挙権を得た二十歳の投票率はそれ以降、二十一歳から二十四歳の年齢層では一たん低下して、その後は年代の上昇とともに投票率も上がっていくと、そういう傾向があります。
 例えば、平成二十一年に行われた都議会議員選挙では、二十歳の推定投票率が三七・三四%、二十一歳から二十四歳の年齢層が三〇・一二%、二十五歳から二十九歳の年齢層が三〇・八四%、三十歳から三十四歳の年齢層が三九・八七%と、それ以降は順次上昇していると、こういう傾向を示しております。
 選挙権が仮に十八歳に引き下げられた場合の投票率について想定すると、やはり十八歳という時点では、初めての投票ということもあり、二十歳と同様高くなる傾向があると想定されますが、それ以降はやはり、一たん下がって徐々に上昇していくという同様の傾向が見込まれると思われます。

和田委員

 成人式などを見ますと、成人式に行った舞台で我々も乗ったり、その新成人の方々と交流してみますと、そのときに選挙管理委員会が、あなたははたちですから、次の選挙はしっかり選挙権を行使してくださいねというふうに、選管もかかわり持ってますよね。持ってますよね。その時点では確かにフレッシュな感じで、はたちの方々は自分も選挙権を行使しようぞと思うかもしれないけれども、二度、三度となってくると低減しちゃうというのが今のお答えでした。
 そういうふうに一過性のものではなくて、繰り返しますが、恒常的に選挙の必要性、民主主義にとってのかなめだというところなどは、やっぱり政治教育じゃなきゃだめなんですよ。政治教育をしっかりしていくことによって、たまたま成人式のときには、ぜひ次の選挙で使ってくださいねということはいいとしてもですよ、もう自分の生活と民主主義の投票なり投票権というものは、切っても切れないものだということを、密接不可分だということを教育しておかないと一過性のもので終わってしまう、またその繰り返しだということになることを私は恐れます。
 したがって、繰り返しますが、教育委員会なり何なりと協力しながら、いかに日常の選挙なり政治に対する関心を深めていくかという努力を、選挙管理委員会はいろんな手段を使ってやっていただきたいと思うんです。
 最後になりますけれども、質問に入りますが、その前にやっぱり、選挙運動については、投票率を上げていくために戸別訪問の解禁をしていくだとか、あるいは選挙に対するもう少し、公職選挙法の縛りが、何か悪いことをするんじゃないだろうかというようなそういう先入観で、立候補する人あるいは有権者に、そういう懐疑の目で当初から見ているようなふうが法制度中あります。
 したがって、明るく正しく和やかに選挙やろうというよりも、選挙にかかわることは家訓としてだめだぞなんといううちも、今だに東京でもありますし、地方でもあるくらいに、選挙は怖いものだというふうに忌避されちゃってる傾向があるんですけれども、こういうところはやはり打ち砕いていって、選挙は明るいものであって、正しくやって、国や地方自治体を立て直していこうよ、明るくしようよというような、積極的な前向きなそういう選挙管理をしていく必要があるだろうと私は思うんです。
 そういう意味で、私は、さきにオーストラリア、イタリア、ベルギーなどは、八〇%超えるような、そういう義務制を講じた結果出てきている数字と思われるような数字もありますけれども、やはりそういう義務制を講じない限りは、七五%前後ぐらいを健全な民主主義国家の投票率として私個人的には理解しておりますので、そういうところまで持っていくために、どういうふうに今後、今までの答弁を総括する意味で、選挙管理委員会はこれからもどう取り組んでいくかということをお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。

影山選挙管理委員会事務局長

 今後の啓発事業の取り組みは、先生いわれたように投票率向上のみならず、主権者教育の充実ですとか、政治的なリテラシーというんでしょうか、政治的な判断力、分析力というんでしょうか、の向上が求められていると思います。こうした観点に立って事業を実施していく必要があると考えております。
 特に、若年層を中心とした啓発事業としては、先ほど来取り上げられております選挙出前授業ですとか模擬投票を充実するとともに、啓発事業に若者の率直な意見を取り入れるため、二十歳代の若者との意見交換会の定期的な開催ですとか、情報発信手段として大きな役割を果たしておりますホームページの内容の充実、さらには大学生を対象とした選挙管理委員会インターンシップなどを検討していきたいと思っております。

人権施策推進指針について

和田委員

 東京都の人権施策推進指針に関連してまずお伺いいたします。
 平成十二年にこの「みんなの人権」というものの中に、東京都がこれから目指すべき目標が掲げられております。十年以上たっているわけでありますけれども、その間、人権にかかわるいろいろな国レベル、あるいは東京都レベルでの課題が生じてきたり解決をされたりしてきたという経緯がございますけれども、象徴的なものについて挙げていただきたいと思います。

並木人権部長

 平成十二年に東京都人権施策推進指針を策定して以降、平成十七年の犯罪被害者等基本法、それから、平成二十一年のハンセン病問題基本法の整備など、人権施策が進展する一方、児童や高齢者に対する虐待、いじめ、インターネット上の人権侵害などの問題が引き続き起こっております。こうした中で人権課題を取り巻く状況は依然として厳しいというふうに考えてございます。
 この間、都は指針に基づき、社会状況等に応じながら、女性、子ども、高齢者、障害者などの各人権課題についてさまざまな取り組みを実施し、平成二十年に東京都犯罪被害者等支援推進計画を策定するなど、人権施策を着実に推進してきたところでございます。

和田委員

 今、犯罪被害者の基本法とハンセン病の問題基本法は国レベルでできました。これが当然、東京都にも全国的にも波及をしているわけでありますけれども、私が今回取り上げたいのは、この指針の中身も含め思想的なことであります。
 つい最近も、ご承知かもしれませんが、法務省はこの四月から、新年度から刑務所内における男子の中でも、性同一性障害などの方に対しては、特別にシャンプーの問題ですとか下着の問題とか、そういう問題の配慮をしようというふうに、あの強固な刑務所の中の暮らしぶりにも性同一性障害についての配慮をするというふうになっております。
 また私の経験では、この都庁に来る途中にも立っているビッグイシューの販売者の方がいますけれども、あの方々の全部はホームレスの方でありますが、あの方々が通常立って売っていると、これは道路交通法違反でありまして、立っていることまかりならぬていうのが原則でありますけれども、東京都のいろいろな配慮の上、あそこに立って売っても支障のないような形で、今は、繁華街を含め、ホームレスの方々の社会復帰を前提にしながら、ああいう寛容な措置をとっているという事例もございます。
 このように十年間の時間の中で、東京都の人権指針、十二年に決めて以来、国の大きな動きもありますが、東京都が目に見えないながらもやってきている動きも、今申し上げたとおりあります。それを集約したのがこの冊子なのでありますけれども、そこには一から十まで書いてあります。
 まず初めに、女性の人権問題、子どもの人権問題、高齢者の人権問題、障害者の人権問題、同和、アイヌの人々の人権問題から始まって、第九番目が犯罪被害者やその家族の人権問題となっている。最終的な十番目のところに、さまざまな人権問題というふうになっておりまして、ここに七つ記載されています。その七つは、刑を終えて出所した人、性同一性障害者、性的指向、あるいは路上生活者、これホームレスですね。それからプライバシーの侵害や名誉毀損、親子関係・国籍、これハーグ条約、それから拉致問題というふうに、七つがこの二ページの中に込められております。それ以外の九つの項目は、全部二ページを使いながら記載をされ、図も入り、時には表も入ったりして、都民が見れば、なるほどこういうふうに東京都の中の人権問題は扱われてるのかなというのが明確なんでありますけれども、この七つに関しては全部二ページに込み込みになっています。
 これが、問題を軽く扱っているとは決していいませんけれども、少なからずこれを読んだ方々は、この十というところに全部七項目が入っている、とりわけ拉致問題などについても、国家的、国際的な問題になっているものが、十番目の一番最後、七番目にまでなっているわけですね。順序までこだわるとはいわないながらこだわっているかもしれませんが、やはりここのところは、それぞれ一項目ずつ起こしながら二ページを提供して、明るいこういう見やすいような色彩の中で、東京都の人権はこういうふうに扱っていますよというような形で、都民に--あるいは、もしかするとこれ学習材料になるかもしれませんけれども、中高生の人権問題の教科書に使ってもらうというようなことが必要なのではないかなというふうに思うんです。
 十年たちましたけれども、さまざまな世相変化、社会変化、国際変化の中で、東京都はこの指針にかかわる、とりあえず具体的な問題としてこれにどういうふうな訂正や改廃を加えていくのかという問題と、それから、施策的にはどういうふうな視点でこの人権問題を進めていこうとしているのか、お伺いをいたしたいと思います。

並木人権部長

 指針におきましては、東京都が推進する人権施策の基本理念として、人間の存在や尊厳が脅かされることなく、みずからを律する自立した個人が、権利行使に伴う責任を自覚し、共存と共感で相互に支え合い、都民が世界に誇れる東京をつくるというふうに定めてございます。
 この指針の基本理念は普遍的であり、現在もなお有効なものと認識しておりますが、東京における人権課題の状況や国における人権施策の取り組みなど、社会状況の大きな変化があった場合には、先生ご指摘のような視点も踏まえて見直しを検討すべきであるというふうに考えてございます。

和田委員

 大変熱心な答弁だったんですが、最後聞き取れなかったんですが、私の今指摘したような形で見直しを検討するというふうに、聞こえなかったか聞こえたかわからないので、もう一回答弁してください。

並木人権部長

 指針の基本理念は普遍的でありまして、現在なおも有効なものというふうに認識してございますけれども、東京における人権課題の状況や国における人権施策の取り組みなど、社会状況の大きな変化があった場合には、先生ご指摘のようなそういう視点も踏まえまして、見直しを検討すべきであるというふうに考えてございます。

和田委員

 社会変化、いろんな諸情勢の変化によってはという条件がついていますけれども、今私が申し上げたように、東京都みずからが変化を惹起し、いい意味でですよ、そういう状況をつくってきているわけですから、いつまでもこの七項目を二ページの中に入れたりしないように、また入れたりしないで、二ページ目にきちっと入れてやって、ページ数にしたって十四ページふえるだけですから、それと同時に、この小冊子だけではなくて、実質上の行政の中身も濃くしていく。そういうきちんとした姿勢を私は求めているわけでありますので、そこのところをこれからもよろしく努力を願いたいと思うんです。

東京都の人事制度について

和田委員

 次に、人事制度についてお伺いいたします。
 これは、過去ちょうど十年前に、ここですね、東京都における人事制度の現状と今後の方向というのが出されました。平成十二年七月であります。それから、今回の、昨年十一月にこれからの人事制度の基本的方向というのが、同じ方向なんですが、今後の方向と基本的方向で、間に十年ぐらいけみしているんですが、その中に、十八年に、中間的な一つの方向として、三月に東京都の職員人材育成基本方針というのが出されております。これは職員の視点というのと、それから組織の視点というふうに、ポイントを二つに絞って、これからの東京都の人事問題についての、ある意味では方向性をしっかり打ち出しているものなんです。
 この基本的な方向と、それから今後の方向の間に、十八年に出されたものを三つをこう、点々々を線で結んでみると、大体東京都の人事の方向が把握されるということで、これを中心にして質疑をさせていただこうと思うんです。
 平成十二年の今後の方向を定めたときには、任命権者のレベルでいうと、大体知事部局と、それから公営企業部局で五万三千人ぐらいの職員が当時いました。トータルで十七万八千ぐらい。これは警察、消防、それから学校も含め、全部ひっくるめて大体十八万ぐらいいました。そのうちの五万三千人が職員であったわけですが、今回、この新しく基本的方向を出したときには、五万三千から大体二五%ぐらい、職員の数が知事部局と公営企業段階で減っています。そういうふうに総体が減った中で、今回のこの基本的な方向が出されたものですから、どういうふうに私はこの基本的方向が、平成十二年から十八年、それから二十三年、昨年十一月の段階まで来る過程で変化があったのかなということで関心を持っておりまして、この基本的方向について、先ほど申し上げた三番目の点になるわけですけれども、どういう方向、目的づけでこれを定められたのかということをまずお伺いいたします。

中嶋人事部長

 都では、これまで国や他団体に先駆けた人事制度改革の取り組みや、計画的な人員配置を進めるなど、簡素で効率的な執行体制の整備に努めてまいりました。
 しかしながら、東日本大震災を契機としまして、これまでに経験したことのない新たな課題が浮き彫りとなるなど、都政が担うべき行政課題は一層高度化、複雑化している状況にございます。
 また、組織運営の面では、長年にわたり都政の中核を担ってまいりました団塊の世代の職員が大量に退職いたしまして、十年前と比較して半数近くの職員が入れかわりましたことから、ベテラン職員の知識やノウハウなどの専門性の継承が危ぶまれる状況も生じております。
 こうした状況の変化には、現行の人事制度の枠組みでは対応し切れないことから、新たな時代の要請にこたえつつ、十年先の将来を見据え、一層強固な少数精鋭体制を支える人材の育成活用を目的としまして、今回の基本的方向を策定したものであります。

和田委員

 十年後ということなのですが、先ほど申し上げましたけど、十八年に基本方針というのを出して中間的な見解を出しました。その前十二年には、今後の方向という形で出して、それがぶれてぶれてぶれてきて、今回の基本的な方向になったと私は見ているんです。
 ですから、当初、もう東京を含め日本の出生率も含め、出生人口が決まれば五年後には五歳年をとる。あるいは六十年たてば六十歳年をとるとわかっていながら、その対応がおくれたために、三ポイントにおける軌道修正的な方向づけの、これからの方針ですよというのを、十年間の間に、十八年もひっくるめて、三回出さざるを得なかったというのが私の一つの見方なんです。それほど人事というのは流動的であって、また世相的でありますから、決めて固定的にはいかないというのはよくわかります。
 かつて私どもが学校を出て就職するときには、ちょっと問題がある発言かもしれませんが、公務員になり手がいなかった。みんな企業の方に行った時期がありました。しかしここ数十年は、公務員の方が企業よりも魅力があって、そして多くの方が公務員志向になってきている。しかしながら今の人は、かつて公務員よりも私企業の方が人気があったよなんてことをいっても想像もつかないと思うんですね。しかし、事実そういう時代はあった。そのときには、やはり私企業の方に有為な人材が集まってきて、私企業がどんどん企業の方が繁栄し成長していった。だけどこの低成長になってきたりしますと、どうしても揺り戻し的に公務員の方の志向が多くなってきて、集まって質が高くなってくればいいのでありますけれども、やはり追いつかなくなって、その当時の、補てんができないものですから、ここにきて団塊の世代が卒業してしまうと、卒業というのは退職ですけれども、もう後の補充がきかない。中途採用などということをうたっていますけれども、そのとおりいってないというようなことが全部積み重なってきて、今回の基本的方向の、私は設定になったというふうに思っているんです。
 そこで、採用試験制度などについても、今回の基本的方向では、知識だけじゃなくて課題解決力などにその評価を置いた試験制度を取り入れたいとか、あるいは思考力を見きわめる試験内容にしたいとか、こういうふうにきれいにうたってはいます。しかしそれをどう実現していくのか、どう実行していくかということは、ここにはまだうたってない。そういうことなどについてどう進めていくのかというのが一点目です。
 それから、二点目は、高齢化社会を迎えて、なおかつ団塊世代が卒業してしまった後、高齢者に対する雇用、高齢者雇用をどういうふうに考えていこうとしているのか、これについてお伺いいたします。

中嶋人事部長

 まず採用試験制度につきましてですが、採用は都における重要な経営戦略の一つであり、これからの都政を支える豊かな発想力と高度な専門性を兼ね備えた多様な人材の確保が求められております。
 こうした中、今日の大学教育におきましては、社会ニーズを反映した学部の多様化、学際化が進み、現行の法学などを中心とした限られた分野からの出題が多い採用試験では、多様な人材を幅広く取り込みにくい実態がございます。
 今後は、採用試験の企画、立案、実施を担う人事委員会とも緊密に連絡いたしまして、首都公務員の素地を有する人材が見極められるような試験内容の見直しに取り組んでまいります。
 また、試験区分や昇任などの基礎となります職種についてでございますが、職種は職務をその類似性により分類したものでして、職務遂行に当たって必要とされる専門的知識や経験等に基づいて個々に設定されます。
 都の事務事業は、社会の変化、行政需要の変化に的確に対応しなければならず、都はその都度職種の見直しを行ってまいりました。今後も事業動向を見きわめまして、職務実態を精査した上で、必要な職種の見直しを行ってまいります。
 最後に、六十五歳まで働ける環境づくりですけれども、組織にとりましても、専門性の継承という観点から、ベテラン職員が六十五歳まで活用できる環境整備は重要であると考えております。そのため都では、定年退職後に、これまで培ってまいりました知識や経験を生かして、定年前と同様の本格的な職務に従事する再任用制度を平成十三年度から導入しておりまして、今後はこの制度をさらに活用してまいりたいと考えております。

和田委員

 ご承知のとおり、平成二十五年度末に定年退職を迎えた方は、このままでいくと無年金、無収入になっちゃう。それをどうその間を埋めていくかという問題が社会的な一つの課題になっています。そういう中で、今お答えいただいた高齢者の問題、卒業者の問題というのが出てきます。
 私は遠からず、東京都も定年延長をせざるを得ないだろうというふうに思ってはいるんです。したがいまして、人事構成全体を見ていった中で、一つの、五年先十年先もうわかっているわけでありますから、これから先の定年卒業者の数の問題、それをどう補完していくかというような問題、これなどはもう今のうちから先取りして動いていくべきだと思います。
 それから、試験制度の問題、採用試験の問題ですが、今まではどうしても、先ほど答弁があったように、法学とか、どちらかというと司法試験的なそういう問題の出題傾向もありましたし、短答式のいろいろなそういう問題もありましたが、やはり人間的あるいは応用のきくような柔軟性のあるようなそういう設問、試験問題を出していくようなことをすることによって、職員の融通性というか柔軟性もそこの中から求めていくという時代が来ているんではないかなということも添えておきたいと思うんです。
 それから、次の問題は、係長級職の昇任の選考の問題です。
 これはかつて本人の申込制もあったわけでありますが、これは極めて評判が悪いというか、申込率が低くなってきて、実際上に完全実施となった--十四年から導入していますけれども、十九年から完全実施になった以降、申し込みの率だけを読み上げてみますと、十九年が三九・二%、それから二十年度が三七・三%、平成二十一年が三五・八%、二十二年度は三四・九、ずっとこう右下がりに減ってきて、ついに三五%にまで減ってきています。
 こういうような形の中で、ようやく本人申込制の見直しに手を染めるということになるわけでありますが、これなどについても、なぜなったのかということを私ども、まず聞かなきゃならぬと思っております。
 それからもう一つは、勤勉手当などの成績率の問題ですね。これはどういうふうに反映させようとしているのかどうなのか。今回の基本的方向の中で取り扱い方をお聞きしたいと思います。

中嶋人事部長

 都の組織運営におきまして、係長は実務のリーダーという極めて重要な役割を担っておりますことから、係長級の昇任に当たりましては、意欲と能力のある職員がみずから選考に申し込む仕組みを導入いたしました。しかしながら、その後、昇任適齢期にあります職員の出産や育児、介護など家庭事情のほか、必ずしも昇任を望まない職員意識の変化もありまして、結果的に選考の申込率が低下しております。
 こうした中、係長に求められる能力の明確化や、必要な経験を積ませる配置管理など、チャレンジしやすい環境の整備に努めてまいりましたが、今後は、職員のライフステージにも配慮しつつ、組織として必要な適任者を選抜する仕組みに改めてまいります。
 また、勤勉手当の成績率は、職員の頑張りを特別給に反映させるものであり、職員のモチベーション向上にも有効な仕組みでありますが、その実施に当たりましては、客観的な評価制度の整備と的確な運用が前提になります。そのため、都におきましては、まず全国に先駆けて人事考課制度を導入いたしまして、評価に対する職員の納得性を高めながら、順次管理職、係長へと段階的に対象範囲と査定幅を拡大してまいりました。
 今後、こうした取り組みをさらに強化いたしまして、成績率の運用を一般職員にまで拡大していきたいと考えております。

和田委員

 ちょっと苦しい答弁だなというふうに思うんですね。私が尋ねているのは、本人申込制の見直しが、三五%までこうずっと右下がりになってきちゃった。これはもう原因として、今おっしゃったように、昇任適齢期の職員の人が出産したり育児したり介護したりするという家庭事情のほかに、本人のモラールというか、昇任を望まない意識の変化が出てきちゃったために三五%になりましたよと。
 こんなんでいいんでしょうかね。生活環境が変わったから、本人の意識が変わったから、三五%しか昇任選考申し込みはないんですよということで、他人事じゃないと思うんですね、これは。私はそう思いますよ。そこのところをどうしていくかというふうに、いわゆる士気、モラールを高めていくというのが、やはりトップなり責任者の一つの姿勢だろうと思うんで、こうなったんでしようがありませんよというんじゃ、どこの組織も成り立たないじゃないですか。
 いわゆる先ほど申し上げたとおり、今の厳しい経済状況の中では、就職希望者はみんなあこがれの職というのが公務員なんですよ。公務員に、周りの人があこがれている職の人がですよ、昇任適齢期になっても出産だ育児だ介護だっていうんで望まない。それからいろんな事情から望まないというように意欲がなかったら、私企業の人が聞いたら何ともったいないことかな、場合によっちゃ批判も出てくるかもしれない。そういうことで、その上司である幹部の方々の職員教育が成り立っているのかなということでは、私は残念だなというふうに思います。
 それから、人事考課制度についてはここにも書いてあります。十二年前にもしっかり書いてあって、そこでは確かに全国に先駆けてということでうたって立派だと思いますけれども、それを最終的には段階的に対象範囲と査定幅を拡大していきますよというだけで終わっちゃってる。人事考課制度っていうのはどこでももうこのごろは取り上げているんですけれども、それの段階的な対象範囲と査定幅を拡大して、どういうふうになっていくのかというところまで出てこないと、これまた同じような、何年かたって質問したら、いや、段階的に対象範囲と査定幅を拡大したけれども、結局、この数字、三五%と同じように、当事者が意欲がなかったもんですからだめでしたという形になってしまうかもしれない。そうではなくて、やはり組織というのは、経験者なり責任者がしっかり教育していくところから意欲が出てくるし、組織全体も活性化してくるわけでありますから、他人事のような答弁じゃ困ります。そのことだけ申し上げておきます。
 それから、最後になりますが、四問目になりますけれども、今申し上げたことと関連するんですが、制度をこのように三回にわたって方向を変更しても、改正しても、その実効性が整ってこないと、ただ、絵にかいたもちに終わってしまうんです。このことを総括する形で、人事部長になりますか、答弁をお願いします。

中嶋人事部長

 人事制度は、制度の適切な運用を通じまして、都の事業の円滑な推進に資することが目的であります。
 今回の基本的方向では、この目的を達成するために、多様な人材が確保できる採用制度、計画的な配置管理による専門性の向上、職員の頑張りに一層報いる給与制度、さらには、管理監督職の機能強化などの実現に取り組んでいくこととしております。
 こうした制度改正をより実効性の高いものとするためには、制度のねらいを各局各職場に浸透させるとともに、制度の運用を通してさらなる課題を把握し、今お話にありましたような、その都度必要な見直しを加えまして検証していくというプロセスが重要であります。
 今後も引き続き、適時適切に制度の運用を検証し、必要な対応を図ってまいります。

小笠原諸島について

和田委員

 次に、小笠原の問題に移ります。
 これは昨年六月に世界自然遺産に登録されまして、その後、観光客が随分と増加しているようでありますが、その観光客の変化についてまずお伺いいたします。

榎本多摩島しょ振興担当部長事業調整担当部長兼務

 世界自然遺産登録後、平成二十三年七月から十二月までの半年間におけます帰島、仕事、研究目的以外での「おがさわら丸」乗船客数は一万三千六十四人で、前年の同時期と比較いたしまして約一・五倍に増加しています。
 繁忙期の七月、八月は大きな変化はございませんが、秋の閑散期の落ち込みが例年ほど激しくなく、高どまりしているという状態でございます。
 また、観光クルーズ船によります来島者数につきましても、同じ七月から十二月までの半年間の実績で二千百四十五人となっております。前年は、同時期に予定されていた入港が悪天候により中止となるなど、実績がなく比較が行えないことから、平成二十一年の同時期と比較いたしますと、約一・八倍に増加しております。

和田委員

 大多数の方は、「おがさわら丸」も含めた船で行くことになっていると思います。大多数の方はですね。この「おがさわら丸」もほぼ満席に近いときもあったり、天候によってはいろいろありますけれども、順調にいっているように聞いております。
 「おがさわら丸」も三十三年ごろが一つの買いかえ時期になるのかなというように思います。今から十年後ぐらいでありますが、そうなりますとまた東京都の方も、過去の例からすると、六十億ぐらいかかる費用のうちの半額を東京都負担、三十億ぐらいの負担が、同じ形を新造成するとなるとかかってくる、また造成期間も二年ぐらいで新しい船ができるといいながらも、さかのぼって三年、都合五年ぐらいはこの船にかかわって竣工するところまで時間がかかるとなれば、あと五年ぐらい先には、もう船の建造をどういうふうに東京都がかかわっていくのかという結論を導かなきゃならないという事態に遭遇します。
 したがって、一方で世界自然遺産についてのお客様がふえたということは歓迎しながらも、老朽化してきている「おがさわら丸」の新しい買いかえについての財政負担も含め、その会社との話し合いも含め、そろそろ準備をし始める時期にかかってきているのかなというふうに思いますものですから、観光客の増加だけに喜々とするだけではなくて、そういう行政の支援背景などについても、よろしく配慮していただきたいというふうに思っております。
 さて、「おがさわら丸」の件はそういうことでありますが、やはり小笠原の一番の課題は航空路だろうと私は思います。その航空路の検討は今どういうふうになされてきているのか、お伺いいたします。

榎本多摩島しょ振興担当部長事業調整担当部長兼務

 小笠原の航空路についてでございますが、平成二十年に都と小笠原村で構成いたします小笠原航空路協議会を設置し、航空路開設についての検討を行っております。
 航空路開設に当たりましては、自然環境への影響を初め、費用対効果、運航採算性、安全性の確保など、さまざまな課題があり、現在、航空路協議会において、硫黄島活用案、水上航空機案、洲崎地区活用案の三案を中心に、こうした課題の整理を行っております。

和田委員

 先ほど来答弁いただいたとおり、観光客は順調にふえてきていると。そしてまた世界自然遺産の環境汚染というか、そういうことにもセッティングがしっかりできてきているということでもあります。したがって、島全体の経済的な波及効果も含め、順調にはなってきているんで、それで安心し切るわけではありませんけれども、島がかつてよりさま変わりし始めてきているな、いい意味でさま変わりしてきているなというふうに思うもんですから、ここは慎重にかつやわらかく温かく見守っていただきたいというふうに思うんです。
 私は、どうしても島にとって必要なのは飛行機だろうと思っています。船は、三十三年の「おがさわら丸」の新造成も含めて、それはいいと思いますが、何しろ、妊婦の方だとか体の緊急性の病気の問題だとか、そういう方々の話を島に行くたんびにお聞きをしたりしますと、何としても二十六時間、あるいは場合によってはもっとかかる船では間に合わないのではないかなという気がします。
 それから、たまたま知事とも同席したときに、知事も観光客は時間をかけてふえていけばいいんだ、緊急時の島民のためには、自衛隊、海自がいろいろ面倒見てくれるというようなことも含めて話をされておりましたけれども、やはり知事も飛行機の重要性には何か一つの思いがあるように思うんでありますけれども、東京都の考え方はいかがなものでしょうか。

榎本多摩島しょ振興担当部長事業調整担当部長兼務

 現在、小笠原諸島への交通アクセスは片道約二十六時間、週約一便の「おがさわら丸」に限られますことから、島民生活には多くの負担が生じている状況でございます。特に、重篤な救急患者が発生し、島内の医療機関で対応することが困難な場合には、海上自衛隊に対し要請をし、飛行艇等による救急搬送を行っております。こうしたことからも、緊急時の移動手段としての飛行機は、医療や福祉の分野など、島民生活の安定にとって大きなメリットをもたらすものであると認識をしております。

和田委員

 現場に行っていろいろ説明をお聞きして、飛行機、飛行場の問題などを聞いていますと、やはり環境問題などが障害となっておりまして、なかなか飛行場を建設するというところは難しいのかなというふうに思います。そうなってきますと、やはり水上飛行艇が、当面のところ解決の道ではないのかなというふうに思っております。
 また、これはあくまでも報道ニュースでありますけれども、昨年の七月と記憶しますが、防衛省の関係で、武器輸出三原則をある一定自由化することによって、水上飛行艇を民間転用できるというふうな、そういうニュースもございました。ある会社によると、座席を輸送用に改変しますと、大体三十八席座れるようになるというふうな報告もちょうだいいたしております。
 こういうような形で、武器輸出の三原則などが崩れたということも含めまして、水上飛行艇の活用などについて、とりわけ小笠原航空路への水上飛行艇の導入などについては、どういうふうな考えを持っていらっしゃるのかお聞かせ願いたいと思います。

榎本多摩島しょ振興担当部長事業調整担当部長兼務

 小笠原航空路への水上飛行艇の導入につきましては、小笠原航空路協議会において、硫黄島活用案、洲崎地区活用案とともに検討を行っているところでございます。
 水上飛行艇につきましては、今委員ご指摘のとおり、七月に報道もございましたけれども、昨年の四月に防衛省におきまして、自衛隊機であるUS-2の民間転用を行う場合の手続が定められたと承知してございます。一方で、メーカーによりますと、実際に旅客輸送を行う民用機として転用するためには、機体の大規模な改造開発や型式証明の取得などに数百億円規模の費用を要する可能性もあると聞いております。
 また、水上飛行艇を民用機として小笠原航空路に導入するためには、湾内または湾外に水上飛行場を設置することとなります。湾内に設置する場合には、航空法上、周囲の山を削るなどの自然改変が必要と考えられ、湾外に設置する場合には、波浪の影響により就航率が低下するというおそれがあるなどの課題がございます。
 引き続き、US-2の民間転用の動向の把握に努めますとともに、課題の整理を行い、他の二案とともに、自然環境への影響を初め、航空機材の技術開発動向、経済性、安全性の確保など、多面的な検討を行ってまいります。

和田委員

 あれもだめ、これもだめで、四面閉塞状態になってきているのが、小笠原に関係する飛行機の問題なんですね。
 船は、もうくどいようですが何回も申し上げますが、順調にいくようになって、三十三年の船のつくりかえという問題を一定視野に入れながらやればいい。問題は、緊急時の命の問題、そういうときにどういうふうに、二十六時間かけていいのかどうなのか、また一方で、国際的に緊張が、ある国のいろんな行為によって高まってきているときに、海上自衛隊が、主に東京が当てにするような形での民生輸送を頼られて、それほど余裕がある国なのかというふうに見られても、私どもはまさに遺憾だろうと思うんです。
 したがって、海自は海自の本来の任務にしっかり当てはまりながら、たまたまのときにはいいんでありますけれども、もとより海自に期待をするというようなことになると、諸外国から見るといかにゆとりのある防衛なのかなというふうに見られがちともとれますから、そうではないような、まじめな形での都独自の姿勢というのを、やはりここできちっと確立していく必要があるだろうと。要するに、東京都の海上の飛行艇の問題をしっかり位置づけていく必要があると思うものですから、最後のまとめのご答弁にあったように、しっかり検討していただいて早い結論を出していくことが、都民にとっても、島民にとっても大事なことだというふうに思いますものですから、これも強く要望いたしておきたいと思います。

都区財調の問題について

和田委員

 最後の問題に入りますが、都区財調の問題です。
 これは、三月十六日に、ここにいらっしゃる笠井さんが、特別区の区長会の西川太一郎さんとやり合ったという、意見をぶつけ合ったというかやり合ったというか、それが一部新聞に載っています。それは、東京都と特別区のそれぞれの立場を地方制度調査会という政府の諮問機関でぶつけられたということでありまして、これは長い間、笠井さんであろうと西川さんであろうと、その前の責任者であろうと、ずっと続けてきた、全く遠くて近い問題であります。それだけに、私がこれから申し上げる財調問題も、西川区長さんとそれから笠井さんの間の議論の、そこら辺に尽きているのかなと思うものですけれども、これについては付言はしませんが、財調問題に絞って、きょうは二、三点の質問をいたしたいと思うんです。
 さて、今年度の財政調整の協議会がもう終わりましたけれども、議論が前に進まなかったというようなこともいわれております。これについては東京都の考え方はどういうふうに、前に進まなかったのか進んだのか、お伺いいたしたいと思います。

岸本行政部長

 二十四年度の都区財政調整につきましては、去る二月十日の都区協議会で都区合意が図られたところでございます。
 今委員からお話のございました都区の間での議論と申しますのは、協議の中で主に三点ございました。一つは都市計画交付金の扱いについての問題でございまして、それは、区の考え方といたしましては、要は都市計画交付金についてすべての都市計画事業を交付対象とするとともに、その都区の実施割合に見合うように交付金総額の拡大を図れというようなご主張でございました。しかしながら、都といたしましては、この問題につきまして、その財源となっております都市計画税は、都が実施する都市計画事業等に充てるために都が賦課徴収する目的税であること、したがいまして、都区財調におきます調整三税のように、法律により特別区にその一定割合を配分することとされている税とは制度上の性格が異なるということで、区がおっしゃるように、都区双方の実績の割合で配分するという考え方はとり得ないということでございます。
 ちなみに、このことは平成十八年二月の都区合意において決着がなされているというふうに考えておるところでございます。
 なお、都市計画交付金につきましては、これまでも必要に応じて順次拡充を図ってきておりまして、区の都市計画事業の実施状況を勘案しつつ、議会のご支援をいただきながら、交付金の予算額の確保に努めてきているところでございまして、今後とも適切に対応してまいります。
 次に、二つ目の問題といたしまして、年度途中に調整税が減ったときの対策の問題がございました。
 一般の市町村であれば発行できます減収補てん債の赤字債部分の起債につきまして、制度上特別区としては発行ができないと、この問題についての議論がございましたが、これは国の制度におきまして、この赤字債部分について、市町村が通常の起債を充当してもなお、適正な財政運営を行うために必要とされる財源に不足が生ずると認められる場合に限り、発行が認められるというものでございまして、都といたしましては、当然この問題に関しまして、国から求められる実際の財政運営上の必要性があるのかないのかということについての議論を、都と区の間で始めることが先決であると区に提案しているところでございますが、区の方はその必要はないとして、議論が進んでおりません。
 最後の問題として、財調におきます特別交付金の割合の引き下げの問題がございました。
 平成十九年に都区協議会の合意を経まして、調整税の配分割合の変更とあわせまして、特別交付金の割合を二%から五%に、これは財調条例の本則で改正したものでございます。平成十九年度以降、その申請額は、交付実績を大幅に上回っている状況でございます。また、東日本大震災を踏まえまして、災害復旧等の緊急のニーズに即応できるこの特別交付金の必要性が再認識されたものと考えております。
 こうしたことから、実際の各区のニーズは高く、今後とも災害等の復旧に要する経費のほか、普通交付金では捕捉できない各区の独自性が発揮される事業への対応も重要でありますことから、現行の五%の割合を変更する必要はないと、そのように考えているところでございます。

和田委員

 特にことしは固定資産税の見直しが行われるということを含んで、財調が決着を見たというふうに、それこそ承知をいたしておりますけれども、このように、全く予測のつかない経済あるいは景気動向の中で、財調も東京都は東京都のいい分、二十三区は二十三区のいい分でぶつかり合っているわけです。主に争点というのは財源、財政問題だというふうに尽きていると思います。
 ただ、その中でも、今後の課題とする主な事業項目として、認証保育所等の保護者負担軽減の補助の問題ですとか、あるいは高齢者民間アパートの借り上げあっせん事業の問題、子どもの医療費の助成費事業の問題、それから、インフルエンザの予防接種費の問題、あるいは放課後の子ども教室の推進事業費の問題、さらに小学校の校舎改築経費の問題、こういうふうに七つなど、今後、まだ一生懸命お互いに協議しましょうよというふうに、こういうところではまだまだ財源問題とは違って、協議の可能性がまだあるわけです。またもっといえば、妥結したというか、そういう項目も多く載っています。
 ですから違いだけを大きくいうつもりは私ありませんけれども、やはりどうしても特別区などでは、立体化事業などについてはもう東京都に、大規模なものはもちろん東京都になりますけれども、区レベルでやれるものについては区でやらせてよというような声も切実に伝わってくるわけです。
 したがって、それをいまだに弟扱いして、いや、それはおれたちがやるからいいよという形じゃなくて、やはり自主性に見合った形で歩み寄りを図っていくということで、先ほども申し上げた七項目などについては、これからペンディングで協議しましょうよというようなことになっているような、そういうところに少しでも、その接点を用意しながら話を詰めていきませんと、十六日の笠井局長と西川区長会会長さんの、活字だけ見れば相当ぶつかり合ったというふうに見れるようなそごが出てくるわけでありますから、そういうことのないような形で協調関係を持っていくためには、やはり東京都の方が、ある程度余裕を持った形で話し合いあるいは対応を図るという必要があると思うんでありますけれども、いかがでしょうか。

岸本行政部長

 都区財政調整制度は、都と特別区、そして特別区相互間の財源の均衡化を図り、特別区の自主的、計画的な運営に資することを目的とするものでございまして、特別区の財政運営の根幹であると考えております。
 これまで、都区間でさまざまな課題が生じましたが、その都度互いに誠意を持って協議を行い、困難を乗り切ってまいりました。
 一方で、特別区に対しましては、国や地方から厳しい目が向けられており、こうしたことも踏まえながら都区間で真摯に議論を深め、当事者である都と区が議論をする中で解決を図っていく必要があるというふうに考えております。都といたしましても、現行の財政調整制度について課題と認識している事項もございますことから、今後も区と十分協議の上、財調制度の適切な運営に努めてまいります。

和田委員

 細かくは、具体的な項目については触れませんでした。大ざっぱに都と区の財調問題、調整率も含めて、大変困難な問題が横たわっていることは承知の上でありますから、概略だけお話しを、私の意見をいいまた答弁してもらったわけですが、やはりこれから、防災の問題とか、何かが起こってくると、どうしても東京都プラス都心に近いというとあれですが、ビル街の多い特別区の被害想定とか何かも絡めて、すぐに相談に乗らなきゃならないのは都区だろうと思っているんです。
 その意味で、私はこの都区の財調制度を中心にした協議会を、より有効にこれからも継続していくためには、何らかの知恵を働かせなきゃならないというふうに思っておりますので、議会としても関心を持っていくべきだというふうに思います。
 これは委員長にお願いしたい、副委員長にもお願いしたいんでありますけれども、この財調の協議会の中で、区の意見は、例えばこんなことをいってます。
 都市計画交付金の見直しについては、都側は財調協議の場で議論するものではないとのご主張で、議論そのものはできませんでしたと。協議を拒否する姿勢自体いかがなものかと思いますが、まして、ただいま区側の幹事から報告を聞いたところですが、都が協議課題と認めないという理由で、都区間の議論そのものを記録に残さないという姿勢は、長い協議の経緯の中で前代未聞のことといわざるを得ませんというふうに、特別区側の方は相当憤慨した形で、二十四年二月十日の都区協議会の中で、最終的な総括をしているんです。
 私は、都区協議は大体毎年十二月から始まるものですから、この所管の総務委員会で十二月少し前に、やはり関係する特別区の区長さん方を、役員の方でも呼んでいただいて、どういうことがあなた方は望んでいるのかというようなことを含め、参考人になるのか、あるいはただ単なる懇談会になるかわかりませんけれども、委員会としてこの重要な財調問題を含め、都区協議の課題について、一たび関係の方のご意見を聞くような場面を設定してほしいということをぜひ理事会でお諮りいただきたいということを申し上げたいと思います。よろしくお願いします。
 以上で質問を終わります。