2020年9月5日掲載

ヘンリー・アダムズというアメリカ最高の知識人のことを書こうと思う。

 彼の系譜には二人のアメリカ大統領が出ている。父親はイギリス大使である。彼は政治の道には進まず、評論家として一生を貫いた。大著『へンリー・アダムズの教育』によると1900年のパリ万博の展示でダイナモ・発電機を見て、これからの世界が加速変化していく姿を予想して、驚愕している。産業革命は蒸気機関の発明で世界が変わった。荷物や人の移動は機関車にとって変わられた。時代を分ける発明、発見は人類を幸せに導くだけだろうか。機関車の排気ガスは時間と共にオゾン層を脅かし、皮膚がんなどの原因といわれ始めた。

私たちは空気を吸って、吐くことでまず命が保てる。2分も空気が肺に行かなければ死ぬ。だから吐いて吸う。食物を摂って、排せつする。体を構成する栄養を体に入れる。何の不思議もない。当たり前となれば誰も気が付かない。

 誰もが自分で、考えるヒントを手に入れることで、色色な現象を連想できるようになる。アダムズは62歳の時、パリ万博でダイナモという近代動力の原点を見て、雷に打たれた。これからは、ダイナモが世界を作り替える道具だと納得した。ヒントを得たのだ。それから亡くなる1918年まで、新しい発想、科学、力学、加速度の法則と評論、歴史の著述をしながら時代を啓蒙していった。日本でもっと知られてよい世界的な人物だと思う。いま翻訳中で今年には公にしたい『チャ—ルズ・メリアムの教育遍歴』は、もともとメリアム自身も『ヘンリー・アダムズの教育』を手本にして書こうとしたらしい。その概要版として今訳している本が位置付けられる。上昇志向のおおせいなメリアムの一面が知れる。

2020年9月3日 記