『政治発言』発刊にあたって!
和田宗春
Dear とうさん
これをかいているいまはまだ、選挙がどうなったのか分かりません。ただただうかっていることをいのるのみです。
いろいろなひとのことばをよんで、さらに自分の世界をひろげてください。
ではバーイ。 ようこ
20/6/97
サセックス大へ留学中の長女、洋子から都議初当選の際に『政治発言』の原著が届けられた時のメッセージです。ぶ厚いオックスフォード大学出版の本を手にとって、翻訳してみようと決意しました。洋子の励ましが嬉しかったことと、自分の英語力の修養になると思えたからです。短い文章の奥にある歴史、背景を想像したり再考することは時間はかかっても、楽しいひとときでした。ただ残念なことは、解説文を書き込むことはできません。
そこで単々と突き放しておくことに徹しました。
ですから文京学院大の島田学長の、「この本は巾広い知識が求められますね」という感想になります。
マリー・アントワネット、シーザーなど有名人の有名な発言もありますが、私たちには聞きなれない人の言葉もあります。
政治家の発言ほど、また責任ある立場の人の発言ほど含蓄のある、余情のあるもので深みのあるものでなければなりません。
現代の政治家や責任ある人の発言は、軽くて量が多くて掴みどころがなくなっています。マスコミ時代、公開の時代ということですべてを明らかにするという風潮のためにまず口に出すことから始まるようになってしまいました。かつての雄弁は銀、沈黙は金の教訓は現代に合わなくなっています。テレビをつければ早口の放言で、そのまま文章に書きとめられる体裁のものではありません。しゃべる言葉が少なければこそ、相手や聴衆の心に残る話ができるのでしょう。
話は少し変わります。私の中学時代の友人西垣道夫弁護士(毎日新聞・西山記者の機密漏洩事件の弁護をした)が残してくれた忠告です。区議会時代に、「声を鍛えろよ。声で相手を安心させる。声で発奮させる。いろいろできるんだ」と言ってくれました。それから工夫した記憶があります。
演劇界では「声、振り、姿」というようです。心に刺さる、心を温める言葉とともにその声も重要ないし伝達の要素です。
『政治発言』を環境に沿って活用することで千変万化の生かし方ができると思います。また日本語を大切にして、むやみに外国語を使わず、短縮せず自分の気持を伝える習慣を新しくつくりたいものです。洗練された日本語、優雅な日本語を楽しむためにも、本書が生かされれば心外の成果です。また読後の感想もお寄せください。
『政治発言』 はる書房、税別 3400円
(原本/訳本)