2026年5月16日掲載
アメリカがトランプ大統領の精神異常に触れない異常さ
図書館から借りてきた『ドナルド・トランプの危険な兆候』を読み終えて、今の世界は私を含めてなんと鈍い感覚なのだろうとゾッとした。この本は2017年にアメリカで出版され、翌18年に岩波書店から翻訳されている。ざっと10年前である。25人の精神科医などの協力で書かれている。メモしながら読んでいたのだが、この精神異常者に世界が振り回されている現実はなんと歯がゆいことだろうと思った。
大統領職をまかせているアメリカ国民にはもとより、全世界に影響を与える核兵器の起爆ボタンを握るトランプの精神異常が鮮明に告発されている。その中で『トランプ自伝』の著者として、「彼の破滅的行動のルーツ」と題して書いているトニー・シュワルツを取り上げよう。彼は精神科医ではないが、トランプの自伝を書くために、約1年間トランプと接して数百時間、彼の話を聞き、行動を見てきたという。そのトニーはトランプのものの考え方、行動様式について、確信したこととして次のように指摘している。既述の中から箇条書きにしてみる。
トランプ大統領の症状
- トランプの発言と行動は、二者択一、すべてか無か。
- 支配か従属か。
- トランプが思ったことが「真実」である。
- トランプは良心に価値を置かない。
- 価値を認めないものは良心。
- 常にビジネス。
- 目先の利益しかない。
- 征服と達成を重視。
- トランプの言葉はヘロイン患者にとって、自由にヘロインが手に入ることで依存が治っていると言っているのと同じである。
- 自分への無条件の忠誠。
などなどである。
和田の見解
私が思うに、いまトランプがイランへの執拗な攻撃や過去の民主党大統領への異常な批判などは筆者であるトニーの記述にあるそのままである。
しかし、この本で精神医たちが懸念するトランプの精神障害が公にならないのは、ゴールドウォータールールがあるからであるとしている。このルールは1964年、当時、共和党の大統領候補であったゴールドウォーターの精神障害について、精神科医たちが意見を述べたことをめぐり裁判になった。これに懲りた米国精神医学会が、人の精神状態について意見を述べられるのは診断方法を守った場合に限るとしたというものである。
トランプの精神状態を直接に診断していないのに、想像で精神異常とは言えない、というルールである。
しかし、異論もある。「臨場場面での専門意見」(患者についての診断)と「非臨場場面での専門意見」(一般論としての医学見解)を混同しているという問題である。
患者については守秘義務があるが、大統領のように患者でない人に対しては守秘義務がないというものである。とくに重大な権限を持つ権力者については専門知識を持った市民(精神科医など)が警告する義務がある、とする。権力者ほど常に客観的、常識的、医学的に正常であることが求められる職業でなければならないからである。わたしも賛同する見解である。公人にはプライバシーはないというのが、私の政治活動から得た結論だからである。
2026年5月15日 記
