2015年1月5日掲載

私が古本屋が好きな理由

 北区立王子中学校の時、日曜日、私は自転車で神田神保町の古本屋に行くのがほぼ予定でした。タイヤの厚い、ハンドルの平らな事業用の自転車ですから、荷を載せるのには強くても、乗ってこぐのにはしんどい限りです。

 腕時計など持っていない私でしたが、ほぼ40分かけて御茶ノ水駅を下った神保町に到着していました。さて、それから雑記本すなわちその他多数の10円ぐらいの店前の本を見て回ります。それから心理学、政治学、行政学などの本を20軒ぐらい見て回ると、首が凝って疲れ切ります。しかしその間にそれまで関心のなかった古事記、陽明学、宗教学、民俗学など幅の広い書物に触れることができました。

 いらっしゃいませ、どうぞ奥の方までなどというお追従をいうことのない男女を問わずの書店員。たまたま買っても無口で挨拶もない、商人とは思えない所作は、どの古本屋にも共通していました。気難しい人種だと思ったものです。

 こちらは本を媒介にしていろいろと話をしたいと思っていても、無愛想。しかし、通いつづけました。今の私の本好き、娘たちの人生に本や書くことが伴っている遺伝子は私の神保町通いにあると思っています。今は自転車ではありませんが、神保町に行く時は、岩波ホールの映画と古書店歩きを一度に5〜6時間かけています。中学生のころからの習慣は、私を本好きにして20冊近い著作や翻訳を出すことになるのです。

 小さなころからの続行した行為は何らかの残留物を残すものです。新品より安くなった本が手に入るのですから、ありがたいものです。そんな少年時代がありました。

2014年12月30日 記