2015年2月11日掲載

全生庵のスリッパ

—気取りよい小事—

 谷中全生庵の座禅会に行きました。2月8日(日)。小雨でしたが少し早めに家を出て、朝倉彫塑館をゆっくり観て、朝倉文夫の働きぶりの作品や作居、書斎の重厚さに驚きました。天候のせいか人もまばらで満足しました。

 全生庵では臨済録の素読、解説を聴き、坐禅。ここまではいつもと変わりません。茶礼というお菓子とお茶を素早く頂いて、布団を片づけて散会するのです。

 今日はいつもと違いました。

 平井住職が「手洗いのスリッパぐらいしっかりと片づけられないで、何が坐禅ですか。小さなことができずに、大きなことができるわけがありません。」と語り、私は心のなかで拍手をしていました。坐禅の前に一階の手洗いを私も使います。スリッパは5つあります。私の時は乱れていなかったのですが、住職は気づいたのでしょう。坐禅をしているといって気取って、何か心の修行をして本人は人間をつくっているつもりですが、心の隙があらわれる排せつという動物、人間の本態で真の姿が出るのです。

 かつてゴルフの青木功さんは中卒でキャディになって努力をしていたことを経験として生かして、自分が使った洗面所の水滴をぬぐって後のお客様のために気づかったといいます。

  小さな事が自分の姿、自分の姿をつくっていくことを再確認しました。私はスリッパを手で整えています。

2015年2月9日 記