2021年6月28日掲載

剣道交流

剣道をやり始めてから色々な方とまた色々なことを知ることが出来た。
そのようなことを何回かに分けて書いてみたい。

その1 最後の敵討ちと山岡鉄舟

 私は犯罪被害者を支援する「あすの会」に入っていた。この会は犯罪被害者の基本法を国に制定させるなどしてすでに解散している。岡村勲弁護士が事実上の指導者であった。ご自身も奥様を刺殺され、犯罪被害者となられた。そして会を設立された。都議会で応援させてもらった。

 その会の解散の集いでのこと。パワーポイントを使って、岡村弁護士はこれまでの会の活動をまとめた講演をされた。その冒頭の画面に吉村昭の『敵討ち』の表紙が映し出された。

 この小説は事実に基づいている。主人公は明治新政府が敵討ちを禁止した後に敵討ちを行っている。我が国最後の敵討ちとして知られる。主人公はそのために、当時、春風館道場を開いていた山岡鉄舟に理由を話して弟子入りしている。ここで刀の取り扱い、竹刀での稽古を積んで敵討ちを成功させている。曲げが禁止された断髪令が出ても丁髷を結った人がうろうろしていた時代である。

 岡村弁護士が敵討ちの表紙を掲示したのは犯罪被害者の心を知ってほしいという思いであったに違いない。私もその会場にいて参加者の総意がここにあると思った。賛否は別にして。ある意味で殺人の方法を教えたといえる鉄舟は、当時の侍の誇りを示す行為に同意したことになる。現代では敵討ちは時代錯誤と一蹴される。恥、遺恨を雪ぐことを武士の魂としていた江戸時代から、数年しかたっていない時分である。巷には驚きと賞賛があったという。無刀流開祖、山岡鉄舟はこんな人物である。

2021年6月24日 記