2023年9月26日掲載
「界」のいかがわしさ2
「稚心を去る。」これは幕末の福井藩士 橋本左内の書いた五つの人生訓の一つである。啓発録にある。読んで字のように幼い子どものような考えを捨てなさい、というものだ。彼はこれを十五才で書いた。二十六才のとき、蛮社の獄で死んだ。山岡鉄舟も若い時に同じような自分に言い聞かせるようなものを書いている。
彼らは、要するに物心ついた時から、はやく大人になって世の中に出て仕事がしたいという姿勢で生きた。若いということは、社会から認められない前提であった。橋本の「稚心を去る」はいまの世でもいえる。だがどうだろう。今は以下に若く、無邪気であるかを装う時代ではないか。
—子どもおとなが当たりまえの時代—
ジャニー喜多川事件、区立校長の児童の写真収集などの事件を見ると大人になりきれていない人間たちのおこした事件と思う。いまアイドルという言葉が使われる。雑誌の彩の写真に若さ、純真さ、清潔さを訴える、それほど歳もいかない女性、時には男性も使われる。彼らをアイドルというらしい。町中に人形のような恰好をした幼さの残る、女性を見ることがある。
わざと子供らしさを演じているファッションなわけだ。とうぜん意識するのは女性もさることながら、男性でもある。こうなると子どもは年より幼稚に、大人は年よりも頼りなく若輩を演ずることになる。
—自分、身の回りは自分が責任を持つ時代へ—
現代は、いうならば子どもも大人も未熟が魅力という時代だ。ジャニー喜多川も校長も若い人間を集めて、ある意味で教育する立場である。その人間が成長とともに抑制されなければならない興味本位の性欲や幼稚な関心に負けたわけだ。成長の止まった人間が芸能集団、教育集団の中枢、幹部という立場で尊敬されてきたわけだ。
だが、実態は汚れ切った欲に任せた人間たちであった。自分のこと、家族のこと社会に依存しすぎずに、自分を強く鍛えて生きていく時代にしなければならない。幼さ、若さがもてはやされる時代に生きる子ども、青春時代の子は、この時代に迎合しない強さ、たくましさ柔軟さを身に付けることが大事と思う。
2023年9月12日 記