あらためて『イワンのばか』(1886)を読む
―核心をつく寓話―
小学生の頃に日本の民話、イソップ童話などを読んだり、聞いたりしたことは誰にもあります。
さるかに合戦、桃太郎などから教訓を得たものです。
たしかに頭脳が軟らかい時でしたから、憶えています。だれもがおなじ経験をしていることと思います。
そのなかで私にとっては、ロシアのトルストイが晩年に書いた『イワンのばかと二人の兄弟』はことさら印象が深い話でした。
軍人の長男、商人の次男、イワン、おしの妹(原文通り)と小悪魔のやりとりです。
最終的にばかのイワンは兄弟に利用されているようで、いちばん自身らしい生き方をして、結果として社会から認められる設定になっています。
妹にも「背中と手にタコ」のない人は信頼しない、頭で考える人を認めない、ということの出番をあたえています。
この本は知識のもつ軽々しさやもろさを指摘する中で、現代社会の情報の氾濫を批判しているのです。
先見力のある本といえます。秋の夜長にぜひどうぞ。
2012年11月21日 記