2018年8月18日掲載
大衆の怖れ
いままでに影響を受けた著作の一つにオルテガ・イ・ガセットの『大衆の反逆』がある。1929年のヨーロッパ、米国を中心に描いた大衆論。エリート論でもある。ヨーロッパにそれまであった貴族の精神、道徳が崩壊する過程で大衆が誕生したと説く。
エリートは自分で義務を担う。大衆は権利を主張する、ということだ。
結論として今日の大衆社会状況を言い当てている。
—観光公害に当てはめる—
格安の飛行機料金やパック旅行が流行ってきた結果、わが国も外国人旅行者が目立つようになって久しい。
東京での外国人買物客の多いこと。デパート、電気街は名所にまでなっている。マナー、道徳感の相違は仕方ないとばかりいえない。電車、街中での大声での会話で道の中央に立ち塞がる。
外国でもチリのイースター島、ペルーのマチュピチュの世界遺産で入場制限をするほどにゴミ処理、排水不備が問題となった。築地市場、姫路城も規制している。
すでに賢く上高地は一般車輛の乗り入れを禁止してきた。放っておくと大衆は権利を主張し、観光資源まで脅かしていく。オルテガの100年前の指摘は鋭く、私の心を引き締める。
2018年8月9日 記