2019年11月16日掲載

11月10日の即位パレードに思う
今上天皇陛下と上皇との私の思い出

—親しい眼先—

 私は今の上皇がご結婚されたのを記念した総理府の海外派遣事業で、ニュージーランド、オーストラリアへ約1か月間親善視察をしている。

 全国の青年から選抜された団員など10数名で構成されていた。私は東京都代表であった。出発前に東宮御所で当時の皇太子殿下と美智子妃殿下と会談し、励まされた。その時に美智子妃から、「庭の芝生の枯れているのは、玉砂利を避けて幼稚園に通う成仁親王が行き帰りに通るためで、『なるちゃんの道』というのです。」と披露された。御所を去る時に確かめると確かに細い道となっていた。母子の楽し気な風景を思ったものだ。

 帰国後、再び御所に上がり、ニュージーランドの社会保障やオーストラリアの酪農などについてご報告をさせていただいた。その時、美智子妃殿下はご懐妊されていて、お出ましにはならなかった。

 当時ニュージーランドの社会保障はイギリスのビバレッジ報告などを生かして先進的であり、皇太子のご質問もそこにあった。オーストラリアの乳製品などのお尋ねもあったり、「ニュージーランドのラグビー選手が試合の前にやる士気をあげる踊りのようなものは何といいましたか?」とおっしゃいました。たまたま知っていた私は「闘いの雄叫びでウォー・クライ、現地では『ハカ』といいます。」と答えた。私をご覧になって、「あっそうですか」と微笑まれた。それだけの会話であったがほんわりと温か味を感じた。

—今上陛下とのこと—

 私が都議会議長の時、全国福祉大会が文京区のシビックホールで行われた。天皇陛下がご出席予定だったが体調を崩されたとのことで皇太子(現、天皇)が出席された。

 ところで私は日本の皇室とゆかりの深いイギリスのオツクスフォード大学出版会から出ている世界の名言集『政治発言』を翻訳していた。そこには数千人の歴史上の人物の発言が収録されている。だが日本人は昭和天皇一人だけ。

 このシビックホールの福祉大会に天皇陛下がおみえになることがあらかじめわかっていたため、機会があれば、この本をお渡ししたいと思い、持参していた。天皇陛下の代理でご出席の皇太子様とたまたま控室が隣りであったので、お声をかけて、その本を天皇陛下にお渡し願いたい旨をお話し、お渡しした。皇太子様は興味を示させ、「和田さん、天皇陛下に渡す前に、私が読んでもいいですか」とお尋ねになられた。わたしは「差し上げた本ですから、おまかせいたします」と答えた。「では私が先によんで、陛下にお渡しします」ということだった。それから10日ほど経ったころ、都議会議長宛てに東宮の侍従から電話が入った。「天皇陛下が和田議長によろしく、伝えするように」というお礼の電話。めりはりがしっかりされている親子であると痛感し、現憲法下の天皇制の意味を再認識したのであった。

2019年11月14日 記