2021年7月8日加筆掲載
剣道交流
その3
剣道場を経営していた私の友人がいた。その人の道場開設記念の催しに招かれていった。40年ほど前のこと。そこには子どもが30人ほどと大人は5、6人ほどいた。
来賓として日本剣道形を打ったのは、範士九段 中村伊三郎先生と範士八段 伊保清次先生である。中村先生は武道専門学校出、伊保先生は全日本選手権者お二人の体格は180センチを越える体躯である。丸太ほどの両腕の伊保先生、皇宮警察の白い衣装の中村先生の打太刀、伊保先生の仕太刀。大波がよせて引くような形の極致を目の前にした。
見ていた人々の理解のほどは分からない。しかし私にはその時の光景が未だに脳裏を離れない。
寡黙であった伊保先生の話をしたい。筑波大学の前身である東京高等師範を出られ郷里にもどり教員になり、その後専門の剣道家を目指して再び上京。警視庁などで修業をされた。後年になって芝生に出てゴルフをされた。そして今まで室内の限られた板張りの道場から、太陽のもとの芝生に出た時、「こんな世界があったのか」と驚いたということである。毎日相手との距離が3m程の人生であれば、確かに新鮮な驚きであろう。伊保先生の剣道に架けた一途の人生を思うと感動する。次回は中村範士について語ろう。
2021年7月5日 記