2012年12月14日掲載

現実、現場の試練

―スー・チーさんのいま―

 ビルマ中部に「レパダウン銅山」があります。中国企業が銅鉱山開発をしています。

 2010年に当時の国軍系のビルマ連邦経済持ち株会社と中国の万宝鉱産公司が共同開発に合意しています。しかし、ここに問題が出てきました。環境汚染、土地の強制収用があったとして、今年6月に反対住民が現場周辺を包囲し、工場は一時停止になっています。

 先月下旬に2度目の抗議デモがありました。

―スー・チーさんの出番―

 そこで政府は事業継続の是非を判断する調査委員会を設置し、その委員長にアウン・サン・スー・チーさんが就任することになったのです。

 スー・チーさんが委員長になった背景には彼女が下院の法順守委員長で、この問題を提起したのが国民民主連盟(NLD)の議員であったのが理由のようです。

 「中止」とすれば対中国関係が悪化し、「継続」すれば国民の失望を買うことになります。昨年9月に中国企業が手掛けて、国民の意思で「中止」にしたイラワジ河の大規模発電事業の「ミッソンダム」では、テイン・セイン大統領は国内外から喝采を浴びています。

 この契約のように旧軍事政権時代の契約であっても両国の合意を一方的に破棄するのは異例です。

 このことに中国は不快感を持ちました。今回は「2度目」の違約となります。中国は前回と違い黙っているとは限りません。

 国民感情は「中止」ですが、開発が中止されれば海外資金である外資誘致は勢いを失います。スー・チーさんは板ばさみとなります。

 調査委員会の報告書は来年1月末です。

 人気だけが優先してきたスー・チーさんの力が試されます。注目しましょう。

12月13日 記