2019年4月8日掲載

安倍首相の天皇利用は許されるのか?

 いま流行の新元号のことではない、安倍首相の天皇利用についてである。平成天皇は即位した最初の平成元年8月の記者会見で、「国民とともに憲法を守る」と明言された。敗戦により明治憲法のもとでの天皇制は廃絶されようとしていた。心からの反省から象徴天皇と戦争放棄をもととする現在の憲法が誕生した。そして政治からもっとも遠いところに自分を置く厳然とした節度が平成天皇にはあった。

—安倍首相の皇太子、天皇への面会—

 4月1日に新元号が国民に公表される前に、安倍首相はわざわざ天皇に報告するために参上する行動をとった。

 いま天皇制、皇室への世論(せろん)の支持は70%以上であろう。そのことを考えると、天皇に報告にいくことによる天皇との近親感を演出し、迫っている統一地方選挙、7月の参院選への敷石と見ることもあながち外れてはない。なにしろ今まで白を黒と言いくるめてきた御人である。

 天皇は政治に距離を置く配慮を十分にしてきて、今日の国民からの信頼を得てきた。天皇から安倍首相になんらかの見解を求めることなど、過去にはなかったはずである。

—象徴を利用する権限は首相にはない—

 平成天皇の「私」をなくして国民に向かう姿勢は、自然であり、なんの作意もなく崇高でさえある、と私は思ってきた。ここにきて無味無臭の天皇に近づき、あからさまに元号報告を演出した安倍首相の天皇利用は、天皇の政治関与が憲法違反であるのに対して道徳的批判も受けないのだろうか。

 国民は、安倍首相の新元号をきっかけにした、皇太子の天皇即位に向けての人気取り政策に、気を許してはならない。私たちの天皇との程よい距離を保つという良識が通じない首相だ。

 ここで私の季節外れの一句を披露する。
 稲苅るや 天皇(すめらみこと)の 腰タオル

2019年4月7日 記