2020年12月11日掲載

「ありがとうございます」、「ありがとうございます」の力関係。

 最近気になる言葉づかいについて書こうと思う。

 NHKのラジオなどからよく聞こえてくる言葉で、アナウンサーが専門家に疑問を投げかけて答えが返ってきた後のやり取りである。

 アナウンサーが「ありがとうございました」とお礼を言う、すると尋ねられた専門家も「ありがとうございます」と答える。私の感覚では専門家は「どういたしまして」あるいは「ご参考までに」というのが普通だと思う。この「ありがとう」の応酬の気になるところは、双方が対等関係にあることである。専門家に手当てなどが出ていればお客様であるアナウンサーに感謝の言葉は普通である。だが私の経験では、あらかじめの打ち合わせに報酬などの話は出ず、無報酬の問答がすべてであった。とすれば専門家は感謝することはなく、謙遜の意味で「どういたしまして」の気持ちを表すことになる。この場合の「ありがとうございます」は取材を受けて、名前や立場が電波や新聞に載って知名度が上がったという意味で、尋ねられて「ありがとうございます」ということになる。何を言いたいのかといえば、放送、情報関係者が知らないうちに身につけてきている鼻持ちならない尊大さである。新聞などによくある誤報に対する謝罪記事の小ささは、自分を完全無欠な存在と位置づける態度のあらわれとはいえまいか。尋ねられた方も同調せずに、自分の立場すなわち教えてあげた位置関係すなわち力関係を明確にすることが大切だと思う。情報社会の一つの在り方、見方として苦言を呈しておきたい。

2020年12月8日 記