2021年8月17日掲載

演出、そぶりを見抜く

 名古屋市長が、オリンピックの金メダルの報告に来たその金メダルを噛んだ事件はお粗末の極みである。

 そもそもオリンピックなどのメダルを選手たちが、噛む様子がテレビに映るようになったのは、いつ頃からだろう。1996年のアトランタオリンピックからかもしれない。想像するに、テレビや新聞のカメラが噛んでみてくれ、と注文を付けたのではないか。メダルを首からかけただけでは、選手がメダルをとったうれしさを表現するためには弱い。そこでカメラマンの要求があってということだろう。選手からのポーズとは思えない。演出である。

 こんなことはよくある。海開き、夏休みなど季節の切れ目のニュースでは、決まって海、山、遊園地で楽しい、という感想を子どもに吐かせる。要は絵になる場面を演出しなければニュース、記事にならないのだ。だから加工、創造して雰囲気をつくる。厳しく言えば捏造である。事実、真実に衣をまぶして虚像を作っているようなものである。

 名古屋市長は、政治家以前の愚行で人間失格である。世の中は演出に満ちている。この衣を剥いで、真の姿を自分で確かめる知恵を身に付けなければならない。

 私たち誰もが、偽装、擬態を見抜く眼力、すなわち演出を見抜く力を身に付けたいものだ。気を落ち着かせて考えることでしか身につかない。これは習慣と言える。私についていえば、手拍子を打つように、他人にせかされて出した結論でよかったことはない。

2021年8月16日