2022年10月24日掲載

語彙の貧困が—

 お気付きの方もあるでしょう。最近、「立ち上げ」という言葉が目立ちます。新しくことを起こしたりするために組織などを作った時に使う言葉です。政治家として演説原稿を書いたりする時には、相手の人々の立場、職種、年齢などを調べたうえで内容、表現方法を考えて理解しやすいように話を組み立てます。神経を使います。俳句を作る時も数多くある語彙の中から適切なものを使用します。言論は書く、読む、語る際に誤解のないように自分の真意が伝わるようにするのが要諦です。人生を言葉で生きてきたわけですが、「立ち上げ」の乱用には批判があります。ほかの単語が使われずにいることに思考の貧困さえ感じるのです。新聞、テレビもそうです。流行なのでしょうか。辛口の言語学者、風俗学者の感想を聞きたいものです。SNSなどの伝達方法は進んでいるというのですが、内容の単純化、固定化は後退現象と言えましょう。ほかにも政治家の使う『遺憾』にも同様の硬直を感じます。日本語の危機と思っています。

2022年10月18日 記