2021年6月18日掲載
水道の栓
ひところ北区に23区で唯一の造り酒屋が北区にあった。荒川の側というせいか水が豊富だった。通りに蛇口があって、水がいつでも飲んで良いように利用を呼び掛けていた。のどかな昔の街道筋の雰囲気があった。夏に河川敷の野球練習の帰りに顔中を真っ赤にした子どもたちが、我先に蛇口に口をつけて飲んでいるのを何度も見た。健康で明るい風景である。今その造り酒屋はない。翻って、私たちの身の回りにも蛇口に変化が出てきた。
道路わきに蛇口はあるが、栓がない。使うときに栓をつける。
なぜ栓をつけていないのか。まさか水泥棒を防ぐためか。昔地方では田んぼに水を引くのに水争いがあった、と聞いたことがある。犬の散歩で見るのだが、私の家の近くでは一軒も道路わきの蛇口に栓はついていない。水道事情が良くなった現代であるから、家に帰れば水道はある。だが帰宅途中でのどが乾いたら、蛇口の水にお世話になる人情は許されるだろう。
この栓がない理由を考えた。1、他人が車を洗うために勝手に使う。2、人間がケチになった。3、自動販売機があるからそこで水でもジュースでも買って飲めばいい。などがあろう。
さすがに区の公園には栓がついている。水道の栓一つを見ても世代観が見えて複雑な思いがする。
2021年6月15日 記