2014年10月30日掲載

鉄舟と露伴(2|10)

—その和歌と俳句—

 むかしの人はよく詩や和歌、俳句を書いてその時々の心境を表現したものです。

 鉄舟は超然とした心の有り様をつぎのように詠っています。

 「晴れてよし 曇りてもよし 富士の山 もとの姿は 変わらざりけり」

 世間がどうみようとも、自分は何ら変わっていない、というものです。

 江戸開城の仕事は徳川慶喜の意を受けたもの、そして明治天皇の側に10年仕えました。これを変節という人がいました。福沢諭吉です。しかし頓着しません。

 露伴は芭蕉の句の解説をするぐらいですから、作句します。

 「里遠く露と添い寝の旅枕」と詠っています。

 若いころは放浪癖があったようで、北海道から東京まで徒歩で帰るようなこともありました。その時にこの句ができました。

 そしてこれが露伴の筆名になるのです。

 二人ともごつごつした赤松か黒松の幹のように頑固そうな和歌と句です。

 世事に通ぜず自分、自分と筋を通していく姿に共鳴する人もあると思います。

2014年10月29日 記