2023年3月26日掲載

剣道との44年間の付き合い

[3]座頭市は剣道が出来るのか

 勝新太郎の演ずる座頭市は相手を切り伏せる。小さなものでも抜き打ちで切る。まるで目が見えるようである。見えていたとしても至難の業である。子母澤寛の小説の映画であるから、奇想天外もあってよい。だが実際、盲目の剣士とは聞いたことがない。機敏な動作が要求され、瞬時の判断が必要な対人競技の剣道は、目の不自由な人がいまのままのやり方で楽しむのは難しい。

 剣道にも、サッカーボールの中に鈴を入れるような工夫はあってよい。常時音の出る鈴のようなものを面の上や竹刀の中に付けるとかすればどうだろう。胴、小手、突きの部位にそれぞれ音色の違い鈴をつけるとか。

—眼鏡は必要だが不自由だ—

 100分の1秒の速さで打突を見分ける視力は、正常すなわち検査表の1は必要だ。補強しなければ剣道は楽しめないし、上達しないだろう。

 しかし、眼鏡をかける私の経験では苦労している。まず面の中で眼鏡が自分の息、汗で曇る。相手がボーと見える中で必死に対応しようとしてもできない。剣道を始める人はまずは自分の視力を眼鏡、コンタクトで補強するところから始まる。コンタクトに抵抗のある私が、稽古中に眼鏡が曇ったと言って、曇り止めを塗るわけにはいかない。見えないまま続ける不快がいつもある。打たれてフレームも曲がる。最近、曇らない薬が開発されたという。こんなニュースをいつも気にしている。剣道を楽しもうと思うと眼鏡をかけない人には分からない大きな障害がある。

 裸眼視力が十分でない私は、それを補う眼鏡という外的装置をまず乗り越えるところから剣道を始めた。卓球の素早いラリーのスピードやサッカーの激しい身体接触にも引けを取らない当たりがつきものの剣道。竹刀を握る前にまずは視力対策をしなければならない。

2023年3月24日 記