2023年4月6日掲載
剣道との44年間の付き合い
[5]野球選手の素振りに学ぶ
プロ野球の選手はバットの素振りをかかさない。試合が終わって合宿所に帰っても300本、500本の素振りをした王選手、長嶋選手の逸話は有名である。畳が擦り切れたという。バットを振り終わってからビュンという音が聞こえるという。
縦と横の違いはあっても、繰り返し振ることによってバットのスピードはついてくる。同じことが竹刀にも言える。竹刀スピードを考えたら野球の素振りを真似るべきである。大きな筋肉の肩から肘、手首と連動させることで歯車がかみ合って、スムーズな打ちが可能になるはずだ。
野球から学ぶことは他にもある。打者がバッターボックスに立った時に親指と人差し指はバットを握っていない。バットのグリップを体幹に近いところで振って、スピードある円回転が素早くできるからだ。
剣道の一拍子の打ちは野球のバット・スイングと同じ
素早く出来るということは、回転スピードが上がって球を弾くエネルギーが高くなることである。従って遠くへ飛ばせることになる。また球を待つ時、バットを握る手の親指、人差し指を回転させると体幹に向かって求心力が生まれる。それと同時に生じた遠心力で球を飛ばすことになる。剣道も縦に竹刀を振る違いはあっても、スピードを生み出す原理は同じである。
剣道も竹刀スピードを上げることによって、0.01秒の打突の速さを得ることが出来るようになる。その差が打突の成功、不成功になる。とすれば、素振りは古来から言われてきたように剣道の基本であると、強く認識しなければならない。その証拠には剣道では、古くから「足で床を踏む、足の踏み方」という言い方をする。踏むということは上から下へという縦の加重すなわち重力を意識しての表現である。古人も自然に重力を意識した体の使い方を知っていたと思われる。
日々の素振りの積重ねが竹刀のスピードを生む
朝でも夜でも5分、10分の時間があったら素振りをする。今日、明日の即効は出ない。握り、剣先、柄頭の高さ、お腹との距離を確認して切るような気持ちで振る。一週間で一時間余り振ったことになる。この積み重ねがプロ野球選手の試合後の素振りに当たる。脳が筋肉、心に働きかけてスピードのある素振りとなる。思ったら考えたら、実行して結果を稽古で確かめる。この連鎖を自分の物にすれば必ず進歩する。竹刀を抱いて寝る剣士、バットを抱いてねる野球選手、クラブを抱いて寝るゴルファーみな自分と競技を一体化している。
プロ野球、ほかの競技の選手の姿勢からも剣道を学ぶこともある。プロ野球のテレビ観戦をしているだけでは上達はおぼつかない。
2023年4月5日 記