2023年4月16日掲載
剣道との44年間の付き合い
[6]剣道とゴルフ
剣道を楽しむ人は、朝か夜である。講談社の野間道場は朝稽古で有名である。一年中、休まない。剣士は東京出張の時、防具を持ってきて参加するという。普通、社会人は勤めの後の夜ということになる。警察官や体育館系の学校の先生は職業として昼である。多くの人は太陽に当たる事はまずない道場で稽古する。
私が大島道場に入門した時、大島日出太先生が、早稲田のゴルフ部の出身であった事を知っていて、色々と質問された。クラブと竹刀の握り方の違い、初動の切っ掛けとか。随分と研究心のある先生であると感心した。
その時も先生と一致したのは、室内と野外の差であった。剣道をしていて、山や丘の上に立つ快感はない。ゴルフをしていて目の前の人間の動作を凝視することはない。その双方を経験してみると、興味深い発見がある。
剣道日本選手権者の驚き
伊保清次範士八段は有名な剣道家で全日本選手権も取っている。その先生が晩年になってゴルフを始めた。ゴルフ場に出てみて、驚いたという。広大な緑と見晴らし。気分の良さにしばらく剣道から遠のいたという。剣道だけに邁進する人が他の世界を知る、とこのようなことが、ままある。一途にある道を求めてくると、やむを得ない。だが中途半端よりよい。
剣道に自然界で味わう気分を求められない。ゴルフには剣道の素早い勝負の帰結を求められない。それぞれに長所がある。お互いに認め合う事で武道とスポーツが共存出来る。
剣道とゴルフの共通点
ゴルフにはフォワード・プレスというバック・スイングに入る前の予備動作がある。ほとんどのプロが取り入れている。体重を左に少し移すと同時にグリップも動かす。それをきっかけに右足に荷重してクラブを振り上げていく。剣道も打突の前に右足あるいは膝を少し出して重心移動をして初動に入る。このゴルフの右足荷重にブレが出るとスイングの軌道がゆがんで、球との接点に狂いが来て、球は思わぬ方に行く。剣道もゴルフでいうフォワード・プレスである右足、膝の先行移動による慣性の法則の利用が体重移動、重心移動となって打突を加速させる。ゴルフをやり始めた伊保範士八段が、フォワード・プレスと剣道の先行移動をむすび付けたのかは、残念ながら未確認である。
2023年4月13日 記