2023年10月2日掲載

剣道と44年の付き合い

【21】つくりを身に付けてその先の打突へ

 野球のイチロー選手は、バッターボックスに入ったら決まった手順でバットを構えた。ゴルフでも自分なりの手順・ルーティンで構えることを、セットアップという。

 まず静から自分の形を作る。そうして動に転換する。実際は動の動きが重要なのだが、その前のつくり、セットアップがしっかりしていないとどうも狂ってくる。剣道もゴルフも相手、球に対する姿勢がまず正しいことが前提で成り立っている武道、スポーツである。ここに常識の落とし穴がある。まず静の世界であるつくりを固める。そして動に転換していく。剣道というと竹刀で相手を打突する、という印象がある。誰もがこの印象から抜け出せずに、まず竹刀を振って打つことを考える。ゴルフも200ヤード先の目標に意識を向けて、構えを作る。瞬間的にクラブヘッドの動きと体の軸を意識してバックスイングからインパクト、フォロースルーまで動く。まさに一瞬である。この動きのもとはセットアップ、構えである。剣道も構えから、つくり、すなわち静から動へ、どのように変化させるか、が問題である。 

—ゴルフのフォワードプレスと剣道の腰、膝の初動—

 ゴルフではバックスイングの前に重心と手をわずかに飛球線方向に押す。これをフォワードプレスという。同じことを剣道でも腰、膝で行う。私はこれを小さな慣性動作と言っている。いわゆる慣性の法則である。ひとたび動き出した物体は、止まりにくいというものだ。

 竹刀を持った体を、慣性の法則に従って前に出る速さにつなげる。必然的に、相手を打つ速さに連動する。この考えを一人稽古、出稽古で試してきた。効果があったと思っている。

 つくりはあくまで静、それを効果のある動につなげるために、このような工夫をしてみた。

 早稲田のゴルフ部で4年間、クラブを振ってきた経験と、運動力学の応用から編み出した私の工夫である。静のつくりを動の打突、正しい有効打突につなげるための試行錯誤の途中である。

2023年9月 記